<オープン戦:DeNA4-3巨人>◇25日◇沖縄セルラー那覇

 古巣と笑顔で決別した。DeNAはオープン戦初戦で巨人と対戦。1点を追う8回に相手のミスを見逃さず、同点に追いつくとキャプテン石川雄洋内野手(25)の適時打で勝ち越し、逆転勝ちを飾った。試合前、ナインを前に巨人との“決別”を宣言した中畑清監督(58)は、采配もピタリと決まっての勝利に満面の笑み。巨大戦力と認める相手を下し、中畑ベイスターズが最高のスタートを切った。

 何も言えなかった。中畑監督は選手、コーチらとハイタッチを交わし、実戦後恒例となったベンチでのひと言を求められたが、出てきた言葉は「OK!

 ナイスゲーム!」。監督就任以来、特別な意識を持ち続けた古巣巨人相手の逆転勝ちに、「込み上げるものがあった。ナイスゲームしかないよね」と、万感の思いを抑えるように、しみじみと振り返った。

 1回、無死一塁から巨人ボウカーに右翼スタンド防球ネット直撃の特大弾を浴びた。1死も取れずに2失点。今年もダメなのか。中畑監督の思いは全く違った。「打たれた瞬間、ちょっと傍観者になっていたね。あれだけの飛距離を見られて気持ちよかった。みんなにいい試合展開になるなと話したよ」。空中戦になればかなわない。それでも、1点を積み重ねていく野球が今年のチーム。その信念があるからこそ、割り切ることができた。

 過去の自分にも割り切りをつけて臨んだ。那覇への移動前に宜野湾球場で行った試合前練習。その開始前の円陣で、自らの決意を選手に伝えた。「58年生きてきて、ここまで巨人一色。本当に世話になってきた。でもこのチームを預かっていく中で、一番大事なのは今日の一戦で答えを出すこと。本当に決別するために、強い気持ちで勝ちにいくんだ」。チームの中で、巨人のOBじゃないかという視線を感じることが、何より嫌だった。今はDeNAの先頭に立つ身。その責任をあえて口にすることで団結と最後まで諦めない執念を求めた。

 その思いが采配にもぴたりとはまった。1点ビハインドの3回無死一塁から金城にエンドランを命じ、同点機を演出。1点を勝ち越されて迎えた8回には、1死一塁から、この日1安打1打点の荒波に代えて代打小池をコール。左翼線への二塁打できっちり結果を出し、逆転劇を呼び込んだ。「せこいくらいの野球で、隙を狙っていく」と話していたように、雨でぬかるんだグラウンドと相手の失策にもしっかりつけ込んだ。

 「監督の采配で勝てる試合はそんなしょっちゅうない。逆もあるし、その繰り返し」と、選手の粘りをたたえた。後半から主軸を下げた巨人からの勝利だけに、喜びはあっても慢心はみじんもない。「相手のミスにうまくつけ込めた結果かな、今日は。1点の価値観、大切さを持ち続けたい」。自分が巨人と決別したように、チームも低迷の歴史から決別させる。それが古巣への最大の恩返し。「恩返しは勝つことって言う人がいるけど、これは間違ってる。巨人ファンから嫌われる男になります。憎まれる人間になることが、巨人、そして野球界への恩返しだな」。その第1歩を示した1勝だった。【佐竹実】