<オープン戦:広島1-3ソフトバンク>◇25日◇都城

 ソフトバンクのドラフト5位、嘉弥真新也投手(22=JX-ENEOS)が「救い投げ」を決めた。広島とのオープン戦初戦。先発川原が初回に4球で危険球退場。登板予定のない予備メンバーだった中継ぎ左腕がブルペンで2球を投げて緊急登板し、2回1安打無失点で見事な救援。“プロ初勝利”を挙げ、開幕1軍へ前進した。

 心臓が早鐘を打つ暇もない緊急事態でルーキー嘉弥真が元気に駆けだした。「ブルペンは立ち投げで2球だけ。いかないといけないでしょ」。マウンドでもわずか7球の練習で「もう大丈夫かな」とタフだった。

 1回無死一塁からのデビュー戦。「社会人の時もこういうのはあったので」。犠打で進められてからが正念場だ。「集中、集中。低め、低め」。つぶやき投法でバーデンをカウント2-2から121キロの縦のスライダーで空を切らせ、侍ジャパンの栗原も直球で中飛とピンチを脱した。2回2死二、三塁でも上村を右飛。2回1安打無失点。完璧な救援を演じた。

 「紅白戦みたいな気持ちより、スクランブルの方がよかった。意味が分からないまま集中して投げられました」

 予備メンバーで当初は登板予定はなし。経験豊富な投手でも戸惑う場面、しかも初陣で肝が据わっていた。降板後も「もっと緊張するかと思った」とあっけらかん。高山投手コーチは褒めちぎるしかない。「まだ時間の余裕はあったのに『できました』と言うから。肩、気持ちが早くできるのは大きなリリーフだよ。別に(1軍に)残ると決まったわけじゃないけど、そういうところは頼もしく見える」。当確はまだ先でも、目標の開幕1軍へまた接近したのは事実だ。

 スリークオーターとサイドハンドを使い分ける変則左腕。「横からは横スラとシュートと決めています」。この日もサイドから4球。2回の上村も「直球より速い」と自負する140キロのシュートで打ち取った。人さし指と中指を折り曲げ、親指と薬指でボールを挟む「嘉弥真ボール」と呼ぶチェンジアップも披露。“プロ初勝利”のおまけも付き、ファンに57番を印象づけた。

 ブルペン陣では馬原が開幕に間に合わず、若き力の台頭も待たれる。「試合をすると研究されてくる。もっとスライダーを磨いて打ちづらくしたい。自分なりに順調だし、開幕1軍に向けて結果にこだわりたい」。嘉弥真がリリーフ争いで強烈な輝きを放った。【押谷謙爾】

 ◆嘉弥真新也(かやま・しんや)1989年(平元)11月23日、沖縄県石垣市生まれ。野球は白保轟小4年で始める。八重山農林、クラブチームのビッグ開発ベースボール入り。都市対抗沖縄県1次予選の登板が評価され、社会人の名門JX-ENEOS移籍。11年ドラフト5位でソフトバンク入団。最速142キロ。カーブ、チェンジアップ、2種類のスライダーと「嘉弥真ボール」と名付けたナックルカーブを持つ。172センチ、65キロ、左投げ左打ち。