<オープン戦:楽天3-1ロッテ>◇10日◇倉敷

 ロッテのドラフト1位、藤岡貴裕投手(22=東洋大)が「緩急差増」で開幕ローテ入りを勝ち取った。10日の楽天戦(倉敷)で先発し、先発投手の責務である5回を1安打6奪三振で無失点。最速146キロ、最も遅い球で101キロと45キロの緩急差で質の高い投球を披露し、西村監督も開幕ローテ当確を認めた。今日11日で東日本大震災から1年。ルーキー左腕も復興への思いを背負い、活躍を誓った。

 4回から藤岡は投げる喜びを感じようとした。3回までは別人。「今日の試合は自分の中で重要だった」。開幕ローテを懸けた一戦と自ら位置付けていた。思いが強い分、力んだ。球が引っ掛かり、ワンバウンドが続出。並のルーキーなら修正できない。だが、4回からは「楽に投げよう」と切り替えた。

 牧田には今季最速の146キロ直球で見逃し三振。フェルナンデスは外角低めのフォークで二飛に打ち取った。フォークで凡退させたのはプロ入り後初めて。岩村には最も遅い101キロのカーブを投じた。対外試合初戦の2月28日西武戦は最速145キロ、最も遅いカーブが111キロ。無駄な力感を取り除いたことで、緩急差が34キロから45キロにアップ。能力が全開した。

 「とろ~んと抜けるカーブが理想」。ヒントはあった。キャンプ中、球界屈指の左腕だった工藤公康氏(本紙評論家)と対談。「聞きたいことある?」と聞かれてカーブについて質問した。「工藤さんが取材した広島の前田健太さんは、親指でスピンを効かせて投げるということを聞けた」。その助言を頭に入れつつ、遠投でカーブも取り入れた。微調整を続け「今日はしっかり抜けた」と理想通りの遅いカーブを投じた。

 自他ともに認める内容だった。西村監督は「今までで一番よかった。6回以降も見たいと言うかもしれないが、シーズンに入ってローテで投げてもらえれば」と当確ランプをともした。

 今日11日で、あの日から1年。藤岡も大学で体幹トレをしている時に激しい揺れに襲われた。その後、大学の活動で被災地を訪れた時に目にした、畑の中に船が浮かんでいる光景は忘れられない。「1年たっても復旧できていない面もある。プレーで勇気を与えたり、募金活動など自分のできることをやりたい」。今日11日はヤフードームで募金活動を行う。あとはこの日勝ち取った先発切符を死守し、投球を通して復興への思いを伝えていくつもりだ。【広重竜太郎】