<広島2-3中日>◇22日◇マツダスタジアム

 中日山本昌投手(46)が19日に78歳で亡くなった父巧(たくみ)さんを、チームの勝利で弔った。広島の22歳のルーキー野村と投げ合い7回1失点と好投し、打ってもセ・リーグ最年長打点の活躍。浅尾が8回にいったん同点とされたため自身の勝ち星は消えたが、試合のウイニングボールを携えて、今日23日の通夜、明日24日の告別式に参列する。チームは5連勝。貯金は今季最多の6となった。

 山本昌はベンチ前に身を乗り出して仲間を迎えた。勝利のハイタッチを終えると、盟友山崎から手渡されたウイニングボールをそっと右のポケットに入れた。「山崎が『このボールを棺(ひつぎ)に入れて』と言ってくれたので、持って帰ろうと思います。チームが勝ったんでよかったです」。球団単独最多212勝目となる自身の勝ち星はならなかったが、先発の責任は果たした。父のもとにチームの勝利の証しを持ち帰る。

 19日に父が亡くなってから初の登板。この日の登板を見据え「オヤジなら『行け』と言ったと思う」と、悲報から一夜明けた20日には父のもとを離れ広島入りした。予報は雨だったが「気持ちは入っていた。中止になるとは思わないで、調整してきましたから」。同じ男として、プロの仕事をまっとうすることが最大の供養だと信じた。思いが通じたのか、雨脚は強くならず終盤には晴れ間ものぞいた。天国からの計らいだったのかもしれない。

 「理解者というか、一番応援してくれた人」という父との思い出は山ほどある。一番は中学校1年のとき。それまで夏場は毎朝のキャッチボールが日課だった。いつもと同じようにミットを構える父に向け投げ込んだが「もうお前の球は怖くて捕れない」と言われた。野球には口出ししない父なりの褒め言葉だったのか-。いまも頭にこびりついているシーンだ。

 46歳8カ月の現役最年長は、打席でも元気な姿をみせた。4回1死一、三塁から一ゴロで08年9月5日横浜戦(ナゴヤドーム)以来、4年ぶりの打点も記録。セ・リーグでは金本(阪神)の44歳0カ月を抜く最年長記録。ただ、プロ野球記録となると勝利など幾多の最年長記録を持つ投手・浜崎真二(阪急)の48歳4カ月。まだセ・リーグ記録だと知らされると「これはプロ野球(最年長)記録だろと思っていたんだけどね…。また浜崎さん?

 しつこいな」と笑わせた。

 最後まで、湿っぽい涙はなかった。1日の今季初登板に続き、勝ち星を消された形となった浅尾への気遣いも忘れなかった。高木監督も「よう投げた」と最敬礼。46歳の背中は、いつも以上に大きく頼もしくみえた。【八反誠】

 ▼46歳8カ月の山本昌が4回に内野ゴロで08年9月5日横浜戦以来の打点を挙げた。46歳以上で打点を記録したのは、投手の浜崎真二(阪急)が46歳8カ月の48年8月10日南海戦で1打点、48歳4カ月の50年4月30日西鉄戦で1打点をマークして以来、62年ぶり史上2人目。セ・リーグでは今年4月13日金本(阪神)の44歳0カ月を抜く最年長記録。