<ソフトバンク0-1楽天>◇22日◇熊本

 熊本は松中劇場だモン。ソフトバンク松中信彦外野手(38)が、2安打1盗塁に本塁への激走と、1万4259人の視線をクギづけにした。

 2回に中前安打。4回は145キロ直球を右翼前へ運び出塁すると、2死から、スルスルと二塁へ走りだした。「長谷川も追い込まれていたし、アウトになってもいい」という思い切りが、無警戒の楽天バッテリーをあざ笑うかのようにスライディングなしでスチールを決めた。10年6月5日広島戦(マツダスタジアム)以来2年ぶりの盗塁に、藤崎台球場は一番の盛り上がりだ。

 次の球を長谷川が中前へ。松中は二塁から激走したが、本塁で憤死した。井出外野守備走塁コーチは「あれは(聖沢の)送球がよかった」と責めなかった。

 「地元のファンの前で元気な姿を見せられてよかった。高校(八代一)時代を思い出しながら、今日は本当に野球を楽しめた」と満足そうに振り返った。あと1本に迫った通算350号は地元で達成できなかったが、1点を追う9回の打席では、勝利に徹して四球を選んだ。

 打率はまだ2割にも満たない。1本足か、すり足か、打法も試行錯誤が続く。「熊本での試合をいいきっかけにしたいと思っていたし、いいきっかけがつかめた」と、思い出の詰まった球場で、悩める主砲が復活への確かなきっかけをつかんだ。【石橋隆雄】