<阪神5-0広島>◇25日◇甲子園

 まったく動じない。プレーボール初球に安打を浴びても、あわてない。むしろ、そこからが阪神久保康友投手(31)の見せ場だ。ナインから「エグい」とまで言われる超高速のクイックで、広島打線を封じ込めた。7回2安打無失点で今季2勝目をマーク。今季4度目となるチームの完封勝利を導いた。さすが求道者だ。

 プレーボールの合図と同時に久保は打者に全力で集中した。梵にいきなり初球を中前へ運ばれる。試合開始からわずか5秒。1回無死一塁の状況で真価を発揮した。

 それは味方ナインから「久保さんのクイックはエグい。あれはもう、クイックの域じゃないです」と言わしめる超速の投球動作だ。10年盗塁王の梵を塁上にくぎ付けにし、巧打者東出の試みたバントもファウルを誘う。二塁に進ませることなく、3者で断った。

 広島打線に攻撃のリズムを作らせない。「あっさり送られて1本で点を取られればズルズル行く。初回だし、そういう(進塁阻止の)意識はありました。抑えることができましたね」。チーム屈指のクイック動作で打者の間合いも狂わせ、難を逃れた。ここからは実力派右腕の独壇場だ。フォーク、チェンジアップを低めに集め、要所で直球の球威も140キロ台後半に上昇。6回までに7つの空振り三振を奪う完璧な内容に和田監督も頼もしく見つめた。

 「今日の久保は良かったね。気合を入れて、しっかり投げてくれた。初回から全力で、思い切り腕を振ってくれたよ」

 1回の梵の中前打以降は7回に松山に二塁内野安打を許すまで、1本の安打も許さなかった。7回2死満塁でも、イキのいい堂林を低めフォークで空を切らせる。7回2安打無失点で今季2勝目を挙げた。

 この日、ヒーローインタビューで何度も「ストイック」と評されたが、実は“脱力系キャラ”でもある。登板日のロッカールームでも緊張感を漂わせず、まるで練習日のようにチームメートと談笑する。「僕はマウンドに上がって打者と向き合うまでスイッチが入らない」。ロッテ時代は違った。先発日は誰とも話さず、ピリピリしていた。「『試合前に雑談していて打たれたら…』って考える時点で意識しすぎ。背伸びせずに自然体で」。阪神に移籍後、肩の力を抜くようになった。余裕のある精神状態も安定した投球の要因だ。

 好投しても、渋い表情を浮かべて「今日は腕が振れていたけど、構えたところに1球も行っていない。球のキレも悪い」と反省する。さらに白星を積み重ねるべく、やはり久保は求道者だった。【酒井俊作】