<広島3-0ヤクルト>◇29日◇マツダスタジアム

 広島ニック・スタビノア外野手(29)が、新人野村を援護する1発で勝利に貢献した。1点リードの6回1死一塁、ヤクルト・ロマンの内角直球を左翼スタンドに運んだ。右肘痛で離脱した栗原に代わり、24日阪神戦(甲子園)から4番に座り続ける。それ以降4試合で13打数1安打と不振に陥っていたが、4番として初の1発で復活。投打がかみ合い、連敗を3で止めた。

 黙々とダイヤモンドを1周した。4番ニックが期待に応えたのは、6回1死一塁。ロマンの内角直球を、高々と打ち上げた。「打ち損じて上がりすぎたけど、いい風が吹いていたね」。勝利を決定づける1発が、左翼席に飛び込んだ。歓喜に沸く満員のスタンドとは対照的に、さも当然と言わんばかりに堂々とホームにかえってきた。

 「(野村が)今日のピッチングもそうだけど、開幕からいいピッチングを続けていた。いいサポートができればと思っていた」

 ともに初めて本拠地のお立ち台に立ったルーキーへの、大きな援護となった。

 重圧をはねのけた。右肘痛で戦線離脱した栗原に代わり、24日阪神戦から4番を任されたが、以降4試合で13打数1安打と不振に陥った。打率も規定打席到達者でリーグ最下位となっていた26日同戦の試合後に、ふがいない思いが爆発した。サヨナラ打を浴びたサファテとともに、ベンチ裏で声を荒らげた。

 「甲子園の3連戦はチームも、自分もランナーがいながら打てず、フラストレーションがたまっていた」

 翌25日、マツダスタジアムで行われた全体練習で野村監督からアドバイスをもらった。「スイングを考えすぎている。シンプルに考えることが一番だと」。豪快な雰囲気を漂わせながら、常に相手のデータを書き込んだファイルを持ち歩くなど野球に対して繊細な一面を持っている。変化球を見極めようとする意識が、打撃フォームの重心を大きく動かしてしまう要因となっていた。

 「ケンタがいないのは大きなロスだけど、いる人でやるしかない」

 投打の歯車がかみ合い、連敗は3でストップ。復調の兆しを見せる「4番」のバットに、期待は高まるばかりだ。【鎌田真一郎】