<西武3-4楽天>◇1日◇西武ドーム

 うれしさを隠すように、試合後の楽天辛島航投手(21)はひょうひょうとしていた。6回2/3を1失点でプロ初先発初勝利。110キロ台のカーブでタイミングをずらし、最速141キロの直球で中島ら強打者をねじ伏せた。ヒーローインタビューでは「うれしいだけです。先を考えず、1人1人投げられたことが良かった」と振り返った。

 08年のドラフト6位で入団し、1年目でプロ初登板を果たした。だが防御率は10年までの2年間で6・11と「1軍レベル」には程遠かった。昨季は左肩痛で1軍登板なし。「1軍定着」を誓った4年目は勝負の年だった。田中と自主トレを行っていた縁で、昨オフはレンジャーズ・ダルビッシュ有投手(25)らと宮崎で合同自主トレに参加。「きっかけじゃないですけど、取り組む姿勢とか、野球を真剣に考えるようになった」。チームのエースに加え、球界を代表する投手を間近にし、転機とするには最高の環境だった。

 自主トレからケガをしない体作りを目指し8キロ増量した。だが「体が重くて自分の感覚がついていかなかった」と、投球時に自然と力みが生まれ、直球のキレ、制球力が失われた。2月のキャンプでは1軍スタートだったが、紅白戦で結果が出ず2軍調整を告げられた。それでも約1800球投げ込みで体重を2キロ落とし、キレを取り戻した。

 星野監督から「先発として大きく育てたい」と期待される左腕。この日の好投を「ナイスピッチングじゃもったいないくらい」と高く評価された。海の向こうではダルビッシュからもツイッターで「辛島初勝利!」と祝福を受けた。田中不在という苦しい台所事情だけに「次の登板が大事になってくる。1回勝っただけじゃなく次もいい投球をしたい」。気を緩めない姿は、たくましかった。【斎藤庸裕】

 ◆辛島航(からしま・わたる)1990年(平2)10月18日、福岡市生まれ。小1から野球を始める。福岡・飯塚高出身で、3年夏に同校を創部47年目にして初の甲子園出場に導いた。08年ドラフト6位で入団し、09年にプロ初登板を果たした。家族は母、姉、妹。174センチ、72キロ。左投げ左打ち。血液型A。