<ヤクルト9-5阪神>◇1日◇神宮

 ツバメキラーと扇の要を欠いては苦しい。2回、クレイグ・ブラゼル内野手(32)が右肘に死球を当て、途中交代。ホームでバレンティンに激突された藤井彰人捕手(36)も右脇腹の痛みで4回の打席から退いた。大事には至らなかったものの、ともに打撲で、3日からの広島戦(松山)は状態次第。神宮初戦では福原も腰痛で離脱しており、追い打ちをかけるアクシデント発生だ。

 まさに“魔の神宮”だ。痛恨の逆転負けを喫した和田阪神に追い打ちをかけるようにアクシデントが続出した。まず2回、ブラゼルがヤクルト村中の変化球を右肘付近へ受けた。「ゴツン」。乾いた音が響き渡り、B砲は打席を飛び出してもん絶した。1度、ベンチへ治療に戻ったが、背番号67の大きな体が再びグラウンドに現れることはなかった。そのまま代走に浅井が送られた。

 4回裏の途中、ブラゼルはスタッフとともに球場を後にした。痛がるそぶりは見せず、無言でタクシーへ。対ヤクルト7戦5本塁打のツバメ・キラーが試合早々に離脱するアクシデント。虎の牙が抜かれたことが、悪夢の序奏になった。

 さらに不穏な空気が忍び寄る。2回裏の守備では、1死三塁からの二ゴロで走者バレンティンが本塁へ突入。完全にアウトのタイミングだったが、185センチ、100キロの巨体で藤井彰に体当たり。転倒した170センチ、79キロの正捕手は脇腹を押さえ、苦悶(くもん)の表情を浮かべた。直後の盗塁も刺すなど続けてマスクをかぶったが、4回の次の打席で代打が送られた。

 「大丈夫です」

 5回、味方打線が猛攻を仕掛けている最中に球場を後にした藤井彰の表情は言葉とは裏腹に険しかった。その後、都内の病院でエックス線検査した結果、2人とも骨に異常はなし。ブラゼルは右肘打撲、藤井彰は右側胸部打撲と診断された。ともに3日から広島戦(松山)には同行する予定だ。ブラゼルは「当たった時は折れたかと思った。やるべきことをやって。火曜日に出られるように」と話して、帰阪した。骨折を免れたのは不幸中の幸いだった。

 ただ、試合に出られるかどうかは今後の状態次第。6月に入って当たりの出てきたB砲が抜けるのは痛い。さらに、この日の試合でも明らかなように、藤井彰が離脱すれば途端に守備力は落ちる。吉田バッテリーコーチは「(自分の)肘が脇腹に入った。息をすると苦しいみたい。ちょっと様子を見ないと」と表情を曇らせ「藤井がいないとつらい」とため息をついた。

 6月29日の第1戦では福原が腰痛を訴え、登録抹消された。鬼門ナゴヤドームで3タテを食らった後、巻き返しを期したはずの神宮3連戦で故障者が3人も出た。“野戦病院”と化した和田阪神、試練はいつまで続くのか。【鈴木忠平】