<阪神1-3広島>◇3日◇松山

 鯉のスピードスターが松山で連夜の大暴れだ。広島ドラフト2位ルーキー菊池涼介内野手(22)がまたもラッキーボーイとなった。「7番二塁手」で先発出場。4回1死から内野ゴロで相手失策を誘うと、一気に三塁へ到達。直後の暴投で、貴重な2点目のホームを踏んだ。「広島野球」を体現するいだてんの活躍で苦手にしていた阪神に2連勝、5月3日以来の4位に浮上した。

 スピードスターがダイヤモンドを駆け回った。1点リードの4回1死。菊池が放った三遊間への強い打球は三塁新井のダイビングキャッチで止められた。だが、前夜の記憶が、相手を焦らせたのか。全力疾走する菊池の目に映ったのは、ブラゼルがジャンプする姿だった。ボールがファウルゾーンに転がり、雨で濡れた芝で失速。このスキを逃すはずがなかった。

 菊池

 ベースを越えたら、後ろからボールが来るのが見えたので、走ろうと思いました。

 50メートル5秒9の俊足を飛ばすと、二塁ベース手前でもスピードを落とすことなく、一気に三塁へ。ただの三塁ゴロが、ラッキーボーイの「足」にかかれば“三塁打”になってしまう。幸運は続く。直後、石原の打席の5球目で、岩田がベース手前でバウンドする暴投。2夜連続で相手ミスの間にホームベースを踏み、貴重な2点目を奪った。1回にいきなり犯した失策を帳消しにするプレーとなった。

 菊池

 (ミスを取り返す)そういうのも、どこかにありました。使ってもらっているので、一生懸命やるだけです。緊張して硬くなるけど、元気ハツラツとやることがモットーなので。

 前日2日の同戦では、1-3の9回2死から代打で登場し、1点差に迫る左前適時打でプロ初打点。直後に、重盗を決めると、振り逃げの間に二塁から一気に逆転のホームを陥れた。指揮官も連日のルーキーの活躍をたたえた。

 野村監督

 止めても止まらないぐらいのスピードだったね。バントも決めて、いいものを見せてくれた。

 大学2年のころ、不思議な感覚に陥ったという。「なんか、風を切ってるよなって思ったんです」。計ってみると、50メートル6秒3だったはずが、5秒9と6秒を切っていた。「トレーニングとかしてないんで、何でか分からないですけど」。プロ入りまで、ウエートトレーニングはやったことがない。「ナチュラル・キクチ」と名乗る由縁だ。

 野性児ルーキーの活躍で、阪神に2連勝。5月3日以来の4位に浮上した。新戦力の台頭で勢いに乗る。次カードの3位ヤクルト3連戦(マツダスタジアム)で、一気にAクラス入りをたぐり寄せる。【鎌田真一郎】<菊池涼介(きくち・りょうすけ)プロフィル>

 ◆生まれ

 1990年(平2)3月11日、東京都東大和市。

 ◆野球歴

 長野・武蔵工大二では甲子園経験なし。中京学院大に進学。1年春からレギュラー。岐阜リーグではベストナイン6度。2年春には打撃3冠。2年、4年に大学日本代表候補に。11年にドラフト2位で広島入り。

 ◆ウエスタン成績

 ここまで55試合に出場し打率2割5分3厘、0本、13打点、4盗塁。

 ◆野性児

 1月の新人体力測定ではずば抜けた瞬発力を発揮。山道を走るなど自然トレで鍛えたパワーを披露した。

 ◆サイズ

 171センチ、69キロ。遠投120メートル、50メートル走5秒9。右投げ右打ち。