<巨人9-3中日>◇30日◇郡山

 巨人が鮮やかな集中打で中日相手の連敗を4で止めた。2点ビハインドの4回、4番阿部慎之助捕手(33)の右前打から5連打。一気に4点を奪い、試合をひっくり返した。阿部は5回の打席で6年連続となる20号2ランを放ち、ダメを押した。負ければ中日に4ゲーム差に詰められるところを押し戻し、足踏みが続いていた優勝マジックも2つ減らして24。再び、Vロードを走り始めた。

 タンタンタンタン!

 リズミカルに単打が続いた。1-3。2点を追う4回だ。1死走者なし、阿部の右前打が反撃の合図だった。1ボールからの2球目、スライダーをすくい打った。試合前から「日本一になるためには、避けては通れない相手。絶対に倒さないと、日本一になれないんだ」と打倒中日を断言。研ぎ澄まされた集中力が生んだ安打だった。

 4番の技は波及する。高橋由も右前打。村田も初球をおっつけて右前打。1死満塁から古城も逆らわずに1点を返す左前適時打。4単打でなお満塁。ここで、藤村が大仕事を果たす。初球を果断に振り抜いて、右中間を破った。走者一掃の逆転3点適時打だ。プロ初の三塁打に、ベース上で右拳を突き上げた。

 5連打で一気の逆転。思えば28日・秋田でのカード初戦。沢村は3回に5連打を浴びてKOされた。悪夢の5連打をきっちりお返しした。原監督も興奮し「このところ、6番7番8番が滞っていたが、良かったですね!

 (藤村の三塁打は)私の見ている中では最高の当たりでした!」と攻撃に大満足だった。

 5連打の起点・阿部は、さらにトドメの2ランを放つ。5回2死一塁。「大きいのを狙えるボールだけを待つ」。カウント2ボール。狙い通り高めの直球を右翼席に持って行った。巨人の歴史で5人目の6年連続20号には「あ、そうなんですか」。個人の記録には頓着しない。「中日に3連敗だけはしたくなかったし、価値ある本塁打となってよかった」と、チームの勝利を喜んだ。

 「ここぞ」での一打には予感があった。2連敗を喫した前日のこと。7回に「阿部キラー・小林正」と対戦。ここ4年間無安打の左腕の前に中飛。だが、「初めて、しっかり前に飛んだよ。今までは、いつもボールの下にバットが入って空振りしていたからね。ヒットエンドランのように、上からたたくイメージで振れた」と、上昇機運の確信を得た。「集中して上からたたく」ことを貫いた結果が、打率、打点で2冠の今季。天敵が、あらためて気付かせてくれた。

 仮にカード3連敗、通算5連敗していたら、マジックこそ消えないが、嫌なムードが漂ったはず。まして中5日のエース内海が4回KO。そんな危機的状況を、阿部を中心とした打線がカバーし、はね返した。今季3度目の3タテを寸前で回避したこの1勝は、ただの1勝ではない。【金子航】

 ▼阿部が6年連続8度目の20号。巨人で20本塁打以上を8度記録したのは、王19度、長嶋13度、原12度、松井9度に次いで5人目。6年連続は62~80年王19年、81~92年原12年、94~02年松井9年に次ぎ、68~73年長嶋に並びチーム4位タイ。7月は本塁打が0本だった阿部だが、これで8月は8本目。統一球導入後、セ・リーグで月間8本以上は、11年8月栗原(広島)9本、12年5月ブランコ(中日)9本、同6月バレンティン(ヤクルト)8本に次いで4人目、巨人では初。