<ソフトバンク1-2日本ハム>◇2日◇福岡ヤフードーム

 「ダルビッシュ対決」を制したのは、日本ハム中村勝投手(20)だった。7回4安打1失点、106球の力投が報われての1勝の余韻に浸った。753日ぶり、今季4戦目で初勝利。「長かったですね。いろいろと壁というか…。自分の投球ができない時もありましたし…」。ゆっくりと苦悩の軌跡を、思い返した。

 鮮烈デビューから2年。大器が浮上の1歩を刻んだ。ルーキーイヤーの10年8月11日、ロッテ戦で5回1失点でプロ初登板初勝利をマークした。西武菊池の外れ1位だったが、同期の高卒ルーキーで初勝利一番乗り。春日部共栄高時代から親しまれた「埼玉のダルビッシュ」の愛称通り、大器の片りんを見せつけた。その後は「いつか勝てる」と思っていたが、トンネルに入った。

 がむしゃらだった当時のように、本能にスイッチが入った。相手先発は高卒1年目でデビュー4連勝中、「九州のダルビッシュ」と呼ばれる武田。「すごい投手だと思う」と一目置く後輩に、乗せられた。最速は142キロも、打者のタイミングを狂わす、独特のしなやかな腕の振りからの直球主体に攻めた。6三振のうち小久保、内川、多村から内角直球で見逃し三振。迫力満点のパワー投球で、ねじ伏せる荒業だった。

 プロ、アマ球界に「○○のダルビッシュ」は多いがユニホームを脱いでも、最有力の資格が十分な逸材だ。東京・原宿で買い物している時に、米国の有名ブランド「アバクロンビー&フィッチ」(通称アバクロ)の一般人モデルとして勧誘されたことが過去3度。184センチの長身に正統派の甘いマスクが、それぞれ違うスカウトたちの目に留まったほどだ。

 中村は「恥ずかしい」とファッション業界には無関心だが、異業種からも第一印象で興味を持たれるほどのスターの原石。昨オフの自主トレで弟子入りしたダルビッシュにも、恩返しの白星になった。今季4試合で防御率1・07。優勝争い佳境で再び、キーマンに名乗りを上げた。「この投球だけで終わらないように、まだまだやっていきたい」。優勝争いに踏みとどまる1勝をつかみとった。【高山通史】