ロッテが優雅なランチ交渉で西岡剛内野手(28=ツインズFA)を口説き落とす。今日5日、都内で10年の日本一に貢献した元キャプテンと交渉を行う。相思相愛で大型契約を準備している阪神入りが決定的という厳しい状況。だがリラックスしたムードづくりも兼ねて、高級日本料理店で昼食を食べてから、古巣復帰を訴えかける。

 米国暮らしを終えた西岡を高級日本料理店で歓待するところからロッテの交渉がスタートする。交渉時間が昼ごろに設定されたことから、ランチの場を設けることになった。02年ドラフト指名時の担当スカウトだった松本編成統括は「もともとうちにいた選手だし、堅苦しくなる必要はない。リラックスした感じで話しましょうということ」と明かした。コース料理に舌鼓を打って、メジャー時代や昔話に花を咲かせてから、場所を移して本格的な交渉に入る運びだ。

 情勢は圧倒的に不利だ。大阪出身の西岡は阪神と相思相愛。阪神はツインズ時代の3年総額1430万ドル(約11億4000万円)以上の契約を提示することは確実だ。ロッテ側は年俸1億7000万円、出来高も含めて2年最大4億円とみられる。健全経営の方針のため、マネーゲームの土俵には乗れない。2年間空けていた背番号7を用意しているが、サプライズというには弱すぎる。

 だが、西岡の心は古巣が誰よりも理解している。交渉には参加しない伊東新監督は「一緒にやろう。またチームを強くしよう」というメッセージをフロントに託した。ドラフト指名時も東京6大学進学を希望し、入団交渉は難航。だが大阪桐蔭高に連日通った松本編成統括が、西岡の心を溶かして、入団にこぎつけた。その“交渉人”も中村球団社長、林球団運営本部長とともに、西岡を説得にかかる。

 林本部長は「奇をてらったことはしない。誠心誠意を伝えるしかない。『またあの時の仲間と日本一を奪回しよう』と言おうと思っている。(復帰の)可能性はあると思っている」と交渉前日の決意を示した。阪神より先に行う大逆転をかけた交渉。食の力も借りて、誠意と情熱を西岡に伝える。【広重竜太郎】