<アジアシリーズ:巨人7-1パース(豪州)>◇9日◇韓国・釜山

 右ふくらはぎ筋膜炎でベンチスタートだった巨人阿部慎之助捕手(33)が、貫禄の決勝打を放った。1-1の7回無死一、三塁から代打で登場し、左前に決勝適時打を放った。主将の一打で打線も活気づき、パースを圧倒。“5冠”へ向け好発進した。

 やっぱり阿部だった。1-1の7回無死一、三塁。代打で登場すると、いきなり勝ち越し打をマークした。「打てそうな球は全部いかないと。カウントは無視した」。3ボールから積極的に振って出て、ファウル。続く5球目の外角フォークをうまく拾い、左前に運んだ。慎之助に2度のミスショットはない。「準備はしていたよ。代打で行くと思っていたからね」と、貴重な一打に表情を崩した。

 序盤から格下のパース相手に苦しんだ。原監督が「第1戦ということで選手は少し硬かったようです」と振り返ったように、5回まで3安打無得点と沈黙。6回に先制を許すなど、ちぐはぐさが目立っていた。

 だが、阿部の一撃を皮切りに、打線が本来の姿を取り戻した。7回は8人、8回は9人で、それぞれ3得点。原監督は「攻守において慎之助が大黒柱。(阿部の)タイムリーで2点目が入ったのがチームに勢いを付けた要因じゃないかな」と、あらためて存在の大きさを口にした。

 「背番号10」は、その姿だけで雰囲気を変えられる。ベンチから出ると、スタンドから拍手が起きた。パースのフィッシュ監督は「阿部は日本で一番打っている」と悔しさ交じりに言った。地元・韓国メディアからは「阿部は10日のロッテ戦は先発で出ますか?」と、ド直球の質問が原監督に飛んだ。そのロッテ戦もベンチスタート濃厚だが、阿部は「1つ勝ったので明日も頑張ります」と誓った。アジアに名をとどろかせる「阿部慎之助」が、“5冠”への道筋を作った。【浜本卓也】