<国際強化試合:日本2-0キューバ>◇16日◇福岡ヤフードーム

 イチロー代役に猛アピールだ。1番に入った長野久義外野手(27=巨人)が2安打と、リーグ最多安打の貫禄を見せつけた。無安打に終わった2番大島洋平外野手(27=中日)も、1回にいきなり二盗を成功。イチローがいなくても、侍ジャパンには1番候補はいる。

 日本の「新・斬り込み隊長」が先制パンチをヒットさせた。侍ジャパンの初陣。1番長野のバットで、第1歩を踏み出した。1回の第1打席、先発ペドロソの2球目。やや外寄りの138キロ直球を引っ張り、左前に運んだ。「日本は手ごわいぞと思わせるような打席にしたい」と1番打者としての役割を認識していた通り、幸先良くチーム初安打を放った。

 日本の「1番打者」といえば、大会2連覇に貢献したイチローが最も印象強い。日本、そしてメジャーリーグを代表する「1番」の辞退が濃厚となったが、その穴を埋めるのは長野だ。5回の第3打席も1ボール1ストライクからの3球目の変化球を中前にはじき返し、マルチ安打。宿敵キューバを前にしても、今季セ・リーグ最多173本の安打を量産したバットがさえた。

 日本シリーズで死球を受け、痛めた右膝の影響も考慮され指名打者で出場。福岡入り後も「まだ腫れているんですよ。触ってみて下さいよ」と話すように、完治には至っていない。ただ、「強行出場」という大げさな言葉は嫌がる。「十分に休養はいただいたので、コンディションは、バッチリです」と、平然と言ってのける精神力の強さも国際大会を戦う上では頼もしい限りだ。

 2年連続でゴールデングラブ賞も受賞した守備力も強みで攻守ともに死角はない。さらに「今回は若い選手が多いから声を出して、盛り上げていきたいですね」と、平均年齢が約26歳という若い日本代表の中では、自然と責任感も芽生えてきた。初仕事を終え「あまり『自分がやらなきゃ』と、思いすぎずに普段通りやれたらと思います」と、気負うことはない。

 世界一への挑戦。スタートラインからの順調に歩を踏み出した。「チームが勝ったことが一番良かった。また明後日、札幌でも試合がある。しっかり勝って『日本は強いな』と印象付けたい」。日本球界屈指のバットマンが、世界の舞台でも輝きを放つ。【為田聡史】