“しずかちゃん打法”で底上げだ。楽天が16日、岡山・倉敷の秋季キャンプでユニークな打撃練習を行った。打者が打った後、一塁ではなく三塁へ走った。マンガ「ドラえもん」で、ルールを知らないしずかちゃんが野球に挑戦。同じように三塁へ走ってしまったエピソードがあるが…。左打者の打撃力アップへ、「振り切る」という基本に立ち返る狙いがあった。

 バッター鉄平、打ちました。バットを放り投げ、走ります。あれ?

 あれれ!?

 三塁に走りだしました!!

 なんてアナウンサーの驚いた声が聞こえてきそうだった。選手も、コーチも、みんな大まじめ。打った選手は、三塁へ一目散に走り出す。なんとも不思議な光景だったが、発案者の星野監督が明かした。「左バッターが開かずに打てるんだ」と、真剣なまなざしだ。

 自身も左打者だった平石打撃コーチ補佐が補足する。「左打者は、どうしても体が一塁方向に逃げながら打ってしまうことがあるんです」。インパクトの瞬間、既に右肩が開き、いわゆる「走り打ち」の格好だ。俊足の選手なら、そうやって内野安打を稼ぐことも可能。場合によっては悪いと言い切れないが、スイングの力をしっかりボールに伝えることはできない。そこで、通常とは反対に三塁方向へ走ることで、最後まで振り切る意識を思い出させる狙いがあった。

 左打者たちの反応も好評だ。今季初めて規定打席に達した銀次は「ボールを長く見られました。特に、変化球をしっかり待って振り切れましたね」と納得の表情。チームには、銀次以外にも聖沢、鉄平、島内、阿部、榎本、伊志嶺、枡田ら左打者がずらり。彼らの底上げなくして、来季の躍進はない。この日は、打者は三塁を駆け抜けるだけだったが、星野監督は「全部逆回りで試合をやりたい。内野手も捕ったら三塁に投げるんだ。頭、使うぞ。難しいだろうな」とニヤリ。まさに、逆転の発想。強くするためのアイデアは尽きない。【古川真弥】

 ◆しずかちゃんが野球に挑戦

 野球が下手なのび太は、ジャイアンやスネ夫から仲間外れに。そこで打てば必ずヒットになるバットなど、ドラえもんに道具を拝借。しずかちゃんら女の子を集めチームを結成、ジャイアンたちを見返そうとする。だが、女の子はルールを知らない。打った後も三塁に走りだす始末だった。「ジャイアンズをぶっとばせ」に収録。