野球殿堂入りを決める野球体育博物館の表彰委員会は11日、競技者表彰のエキスパート部門に完全試合を含め3度の無安打無得点試合を達成した元広島外木場義郎氏(67)を選出した。

 外木場氏は、伝説の右腕と並ぶ偉業で殿堂入りを果たした。沢村栄治と並ぶ3回のノーヒットノーランを達成したが、完全試合1回を含む3回は初の記録。殿堂入り記者発表で「まさかという気持ち。感無量です」と緊張した表情を見せた。

 初勝利が最初の無安打無得点試合だった。65年10月2日の阪神戦(甲子園)で「大場(進)さんが練習中に故障して急きょ(先発が)回ってきた。相手は阪神の村山実さんでしたから、運命的だなと」と振り返る。試合後に報道陣から初勝利での大記録達成者は短命が多いと指摘されて「何ならもう1回やりましょうか」と言い返し、3年後に完全試合で実現させた。

 3回目は72年4月、V7を達成していた巨人相手だった。だが通算では131勝138敗と負け越しており「(殿堂入りは)無理だろうと思っていた」という。故障もあったが「自分のスタイルを曲げてまで投げようとは思わなかった。真っすぐとカーブ、それにこだわって野球生命をかけた」とスタイルを変えなかった。現在は広島市内で中学生を指導。伝説を超えた頑固さは、未来へ伝えられる。【今井貴久】

 ◆外木場義郎(そとこば・よしろう)1945年(昭20)6月1日、鹿児島県生まれ。出水-電電九州を経て64年9月に広島入団。65年10月2日阪神戦のノーヒットノーランでプロ初勝利。68年9月14日大洋戦で完全試合(同時にセ・タイの1試合16奪三振)、72年4月29日巨人戦で史上最多となる3度目のノーヒットノーラン。68年最優秀防御率。広島初優勝の75年に最多勝と沢村賞。75年の193奪三振は当時タイトル対象外もリーグ最多。79年引退後、広島とオリックスのコーチを務め、広島県内でアマ野球を指導。現役時代は175センチ、78キロ。右投げ右打ち。

 ◆競技者表彰エキスパート部門

 プロの監督、コーチ、審判を対象に引退後6カ月を経過している者、プレーヤー部門の有資格者だった者で現役引退後、21年以上経過している者も有資格者とする。10人の候補を選び、殿堂入りした競技者と競技者表彰の幹事(計48人)が3人以内の連記で投票する。3分の2の有効投票で、75%以上の得票者を殿堂入りとする。