ソフトバンクのドラフト6位山中浩史投手(27=ホンダ熊本)が1軍定着を猛アピールした。5日のフリー打撃に初登板。杉浦忠元監督を連想させる右下手投げから2種類の直球を駆使し、9年目の江川から3度の空振りを奪った。キャンプA組(1軍)スタートで新妻から月の小遣い5倍増を勝ち取った最年長ルーキーは、開幕1軍でさらなる“昇給”を狙う。

 27歳のオールドルーキーが持ち味を発揮した。フリー打撃で昨年5本塁打の成長株柳田と、04年ドラフト1巡目江川に計49球を投じた。39スイングのうち、安打性の当たりは8本のみ。プロ入り後、初めて打者に投げた。「最初は緊張した」と苦笑いも、満足そうに汗をぬぐった。高山投手コーチに「いい状態だな」とお褒めの言葉をもらった。

 左の柳田に1本の柵越えを許したが、右の江川は3度の空振りを奪うなどほぼ完璧に抑えた。直球の平均は120キロ台。「球界一ボールが遅い」と胸を張る右腕は、スピードに変化をつけた2種類の直球で、タイミングを外しまくった。まだ打者が仕上がり途中とはいえ、王球団会長も「分かっていても見づらい球。楽しみだよね。いろんなタイプが出てきていいんじゃないか」と絶賛した。

 目標の開幕1軍に前進し、さらなる“賃上げ”に近づいた。昨年12月に早希さん(24)と結婚した。推定年俸1200万円ながら月の小遣いは2万円。倹約のため缶コーヒーは120円ではなく100円のを買っていた。家庭内交渉で出来高制を要求し、キャンプA組スタートによって一気に5倍増。「もっと上がるように頑張りたい」と意気込んだ。

 アンダースローで成功しているロッテ渡辺、西武牧田らの研究が日課。ホークスで右下手投げといえば杉浦忠元監督を連想させる。「球を速く見せる技術を身につけたい。体重移動とかフォームとかで緩急をつけたい」。まだ披露していない80キロ台のスローボールも持っている。東浜だけでない。即戦力セットアッパーとして期待される背番号39は「下から」注目だ。【大池和幸】

 ◆山中浩史(やまなか・ひろふみ)1985年(昭60)9月9日、熊本県生まれ。必由館高2年で下手投げに転向。3年夏に甲子園出場。九州東海大からホンダ熊本へ。09年から3年連続で日本代表に選出された。直球の最速は133キロ。変化球はスライダー、カーブ、シンカー、スローボール。175センチ、80キロ。右投げ右打ち。血液型O。