日本ハムのドラフト1位、大谷翔平投手(18=花巻東)が10日、教育リーグのヤクルト戦に2番手として実戦初登板し、2回を1安打無失点と上々のデビューを飾った。強風すら味方に付け、プロ第1球にいきなり151キロをマークするなど150キロ超えを連発。最速152キロの直球に鋭いスライダーを織り交ぜて、2つの三振を奪った。ついにベールを脱いだスーパールーキーの投球に、敵味方なく感嘆の声が上がった。

 風が、暴れだした。6回表、背番号11がマウンドに上がった途端、天気が急変した。強風がグラウンドの土を巻き上げる。入団会見や卒業式と、節目の度に嵐を呼んできた大谷にとって、これほどデビューにふさわしい舞台はない。ゆったりとしたフォームから投じた“プロ第1球”は、うなりをあげて捕手近藤のミットに収まった。スコアボードに表示された「151キロ」の文字に、3450人の観衆がどよめいた。

 最初の打者を一飛に打ち取ると、続く1番川端は追い込んでから低めのスライダーを振らせた。2番川島への3球目は、この日最速の152キロを記録。7回2死から5番ユウイチに“初安打”となる二塁打を許したが、これは打球が風に押し戻され、思い切って前へ突っ込んだ左翼手が捕球できなかった不運な長打。初めて走者を背負って打席に迎えた6番藤本は、直球で追い込み、スライダーで空振り三振に仕留めた。圧巻の初登板に、西2軍監督は「最高の投球。大したものだ」と、うなった。

 風を、味方に付けた。「近藤さんとは、真っすぐでどんどん行こうと話していました。右翼方向に風が吹いていたので、スライダーは曲がりすぎると思って」。この日、投げた30球のうち、直球は24球。本人は「無駄に速いのではなく、質のいい球を投げられたら。今日は、まずまず」との評価だが、計測不能の4球を除けば、すべて145キロ以上を記録し、150キロ超えは8球もあった。

 今日3月11日は東日本大震災から、ちょうど2年。東北・岩手出身の大谷にとって、震災関連の報道がテレビから流れるたびに目をとめる。「いいニュースを届けられたらと思っていた。また頑張って、こういうニュースを届けたい」。荒れ狂う空模様とは対照的に、晴れやかに話した。【中島宙恵】