<西武4-2日本ハム>◇30日◇西武ドーム

 日本ハムのドラフト1位大谷翔平投手(18)が、あこがれの先輩から、言葉ではなく熱のこもった投球で“助言”をもらった。西武2回戦で、花巻東の先輩・菊池雄星投手(21)との初対決が実現。2打数2三振と完全に抑え込まれた。どちらの打席も、最後は外に逃げる変化球を振らされる同様の攻められ方。左投手相手の弱点が浮き彫りとなったことで、大谷自身も今後の課題として取り組むことを誓い、真剣勝負で胸を貸してくれた先輩に頭を下げた。

 大谷が追いかけ続けてきた背中は、まだまだ遠い存在だった。花巻東の先輩・西武菊池との初対決。2打数2三振と完膚なきまでに封じられ、6回には代打を送られてベンチに退いた。

 大谷

 (途中交代に)今の段階では仕方がないです。昨日(29日)の岸さんもそうですし、(プロは)いい投手がすごく多い。打ち損じも数が多いし、練習してやっていくしかないと思います。

 胸を借り、はね返された。負けを認め、脱帽した。

 プロで生きていくために、克服すべき課題を教えられた。2打席全12球中、7球が変化球。直球はファウルにしかならず、最後はボールゾーンに逃げていくスライダーにバットは空を切った。「見切れたボールもあったけど、見逃しできればよかったものもあった。これからも左投手はカギになってくると思う。しっかり打てるようにしたいです」。左投手を相手にした“苦手パターン”。現在抱えている課題が、浮き彫りになった。

 大谷

 ストレートが多くなると思ったけど、スライダーが多かった。抑えに来てくれているんだな、真剣に勝負してくれているんだなとうれしかったです。

 前日29日の開幕戦は2安打初打点。だがすぐに、プロの厳しさを示してもらい、取り組むべき課題、進むべき道をはっきりと照らしてもらった。

 同じ岩手県出身。菊池はあこがれであり、スターだった。09年の選抜高校野球。決勝まで進んだ花巻東を追いかけ、甲子園まで足を運んだ。スタンドで熱戦を観戦。惜しくも敗れ、岩手代表初優勝はならなかったが、自分も花巻東に進み全国制覇を果たすんだと心に決めた。もしも菊池が優勝していたら、他校を受験していたかもしれないという。

 学年が3つ違うため、一緒にプレーすることはなかった。だが寮は菊池が使っていた部屋をそのまま譲り受け、西武に入団した先輩からもらったサインは、今でも宝物。生まれて初めて、プロ野球選手にもらったサインだ。「岩手県出身の選手はなかなかいない。いい経験になりました。次につなげていきたいです」。

 今日31日の試合前にはブルペン入りする予定。その負担を考慮して首脳陣は開幕から2試合続いていたスタメンから外す可能性もある。それも「二刀流」を成功させるための階段。大谷はプロの舞台で先輩から受けた“教え”を胸に、さらなるレベルアップに励む。【本間翼】<菊池と大谷メモ>

 ◆ドラフト前

 メジャー挑戦を表明した大谷に菊池は「向こうに行ったら一ファンとして楽しみ」とエール。

 ◆入団

 大谷は日本ハム入団会見で「(菊池から)電話で連絡がありました。『自分のペースでやれ、焦るな』と言われました」。

 ◆花巻東タッグ

 昨年、菊池は地元岩手の講演会&トークショーで、大谷と共に東日本大震災の復興支援に取り組むプランを計画。

 ◆間違われた

 菊池は1月のトークショーで“事件”を告白。空港で近づいてきた人に「野球選手ですよね?」と問われ「そうです」と答えると「大谷さんですよね?」と確認されたという。

 ◆反面教師

 大谷の1軍昇格を伝え聞いた菊池は「なかなか言えない立場だと思うけど、痛いときは言うこと」。自らも左肩痛を我慢し、苦しんだ1年目を反面教師にと呼びかけた。