<巨人8-6中日>◇7日◇東京ドーム

 真打ちの本塁打で7連勝だ。巨人阿部慎之助捕手(34)が5回、今季1号の3ランを放った。先発内海が3ランを打たれた直後、再逆転となる初球の一振りだった。阿部は4安打の固め打ちで、通算1500本安打を達成。自身が東京ドームで本塁打を打てば負けないという“神話”も、31まで伸ばした。チームの開幕7連勝は1941年(昭16)以来、実に72年ぶり。死角なく突き進む。

 満を持して役をまっとうした。強すぎる巨人の4番、阿部のバットがさえ渡った。逆転3ランを食らった直後だった。5回2死二、三塁。中日先発山内の初球をしばきあげた。ど真ん中に入ってきたチェンジアップを、長い滞空時間で右中間スタンド中段にぶち込んだ。「(5回表に)本塁打は絶対にダメというとこで打たれた。僕がサインを出したので責任を感じていた」。みそぎの意を込めた今季1号逆転3ランに、思わず右こぶしを握り締めた。

 4安打で今季初の猛打賞も、試合前の時点で打率2割2分7厘は巨人のスタメン野手ではワースト。状態を把握していたから頭と体の修正に徹した。打撃練習から明確なテーマを設定した。球界一のバットコントロールを誇り、昨年までは広範囲のボールも打ち返していた。だが「今年はなかなか振ってくれない。ものすごく集中しているのが伝わってくる」と打撃投手が話すように、ボール半個分を慎重に見極めた。この日ようやく「つかみつつある。良くなってきているんじゃないか」と手応えを感じて試合に入った。

 予感は的中した。先頭で迎えた1、2打席目はフルカウントまで見極めて単打でチャンスメーク。走者を置いた3、4打席目は一転、思い切りよく初球をたたき、「メークチャンスはじっくり、チャンスは思いっきりよく。野球をやっている人だったら誰もが思うことをやっただけ」と、勝負の鉄則を実践した。

 主砲の調子が戻れば、負ける要素は見当たらない。開幕からの連勝は7に伸び、偉大な先輩たちに追いついた。72年ぶりの快進撃には自身のバットで花も添えた。開幕スタメンで初安打をマークした01年からこつこつ積み上げ、通算1500安打に到達した。「自分の鼓動が聞こえるぐらい緊張した。開幕の3日前から発熱した記憶が残っているよ」と、当時を振り返りつつ「使ってくれた長嶋監督、当時ヘッドコーチだった原監督、現役で日本一捕手だった村田さんに感謝している。他にも携わっていただいたコーチとか全ての人に感謝している」と、しみじみ話した。

 13年シーズン、いまだ負け知らずの巨人の真ん中には阿部がいる。「こんなことは毎日は続くわけじゃない。いいときは余計なことは考えないで打席に立っているけど、悪くなったときに、どうするかという準備もしておかないと」。地に足を着けたコメントが最強巨人打線を象徴する。入団13年目の大黒柱が、球団史における、重い歴史の扉を開こうとしている。【為田聡史】

 ▼巨人が1リーグ時代の41年以来、球団タイ記録の開幕7連勝。開幕からの連勝は54年西鉄と99年中日の11連勝が最多で、7連勝以上は02年阪神以来12度目になる。

 この日は阿部が5回に逆転3ラン。阿部が東京ドームで本塁打を打って負けたのは10年7月2日阪神戦が最後で、同4日阪神戦からは10年8勝、11年11勝1分け、12年11勝1分け、13年1勝と2分けを挟んで31連勝となった。昨年の阿部は走者が2人以上いる場面で打率4割1分を記録したが、今年も同場面では右安、投ゴ、中安、右本と勝負強さを発揮している。

 また、阿部は7回に小林から右前打を放ち、プロ野球113人目の通算1500安打を達成。初安打は01年3月30日阪神1回戦の星野伸から。巨人で1500安打以上は9人目、巨人捕手では初。