<ヤクルト5-2中日>◇16日◇神宮

 吉見でも勝てん!

 守道竜が両リーグ最速の10敗を喫した。1点リードの7回、好投を続けてきた中日先発吉見一起投手(28)がバレンティンに逆転2ランを被弾。痛恨の1球で白星が逃げた。高木守道監督(71)もエースの3戦2敗に肩を落とし「早く辞めろ!」など、容赦なく飛んだヤジに反応する元気もなかった。5年連続負け越し中の神宮はやはり鬼門なのか…。借金4で最下位生活が続く。

 「おい守道、しっかりしろ!」「高木、早く辞めろ!」。まさかの逆転負けで、神宮の竜党からは容赦ないヤジが飛んだ。三塁側の敗者の列。もちろん高木監督の耳にも届いていたが、この日はピクリとも反応しなかった。「その前の球も甘かった。甘く入ったところをやられた」。吉見が逆転弾を浴びた場面をしょんぼり振り返るだけだった。

 エースで勝てなかったことが、よほどショックだったのだろう。14日の広島戦は勝ったにもかかわらず、投手交代を巡るファンのヤジにブチ切れ。「うるせえ!

 降りてこいっ!」と応戦した。だがこの日はまるで別人。「(吉見)本人が勝てんのやから…」。憔悴(しょうすい)した71歳が肩を落としていた。

 1点リードの7回。6回まで2安打と完封ペースだった右腕が、先頭畠山にヒットされると、バレンティンにあっさり2ランを浴びた。本人も「一番投げてはいけない所に投げてしまった」と悔やんだが、岩村にも犠飛で計3失点。最下位脱出を確信していた矢先、悪夢の逆転負けとなった。

 右肘の張りを訴えていた吉見は10日間の抹消明け。だが高木監督は前日「勝ってもらわんと困る!」と逆襲のキーマンに挙げたほどだった。だが昨年19先発でわずか5本だった被本塁打が、すでに3試合で4本。開幕投手が勝ち星なしの2敗ではチームも乗れない。

 「そんなこと言わすなよ、俺に」。5年連続負け越し中の神宮との相性を問われると、不機嫌そうにバスに消えた。10敗目は両リーグ最速で借金は再び4にふくらんだ。鬼門でどっぷり、最下位生活に漬かってしまうのか。元気がない高木監督も心配だ。【松井清員】