<広島5-4巨人>◇21日◇マツダスタジアム

 サヨナラだ!

 G倒だ!

 エース前田健が離脱した広島に、またも救世主が現れた。3年目左腕の中村恭平投手(24)が、今季初登板で巨人を相手に熱投。7回途中9安打4失点だったが、試合をつくりサヨナラ勝利を呼び込んだ。投手陣の台所事情が苦しい中、前日の中崎に続く光明。23日からの9連戦を乗り切るメドもついた。

 迷わずに腕を振った。「すごく打つな」。強力巨人打線の迫力を肌身をもって実感しても、恐れるものはなかった。中村恭はストレートを、変化球を、力いっぱい投げ込んだ。

 3回に自らの失策がからみ同点に追い付かれ、7回にも長野の投ゴロを緩慢な守備で内野安打にしてしまう。坂本に適時打、阿部には通算300号本塁打となる2ランをプレゼントしてしまった。だが、先発ローテの谷間で自己最多の128球を投じて7回途中4失点。勝利投手にこそなれなかったが、大崩れもしなかった。前日の中崎とともに最低限、試合をつくった結果、チームに終盤の粘りを呼び、サヨナラ劇を生んだ。

 中村恭

 7回にバテてしまったので、次への課題ですね。緊張はしなかったです。ファームと同じ投球ができました。

 振りかぶることで脱皮した。150キロ左腕として期待され入団したが、2年間未勝利。ずっとセットポジションで投げていたが、今春キャンプで山内投手コーチから「球の勢いも出せるし、振りかぶって投げみては」と助言を受けた。制球を気にしすぎて、本来の投球ができていなかったからだ。シーズンイン後、2軍戦でワインドアップに挑戦。この日も最速148キロをマークして、剛球を取り戻しつつある。

 新フォームの手応えは「まあまあですね」と笑うが、山内コーチは「今まで見た中では球の力もあったし、投げっぷりもよかった。2軍のコーチ陣とよく仕上げてくれた。四球も1つで、成長していましたね」と高く評価した。

 中崎と中村恭が結果を出した。前田健、野村が戦列を離れた先発陣の苦境で、23日から始まる9連戦を乗り切るメドもついた。バリントン、大竹、久本に2人を加え、2軍からは篠田を上げて6人体制にする見込みだ。ピンチをチャンスに変え、浮上のきっかけにする。【高垣誠】

 ◆中村恭平(なかむら・きょうへい)1989年(平元)3月22日、福岡市生まれ。小4から野球を始める。立正大淞南高(島根)では3年春からエースで県8強が最高。富士大から10年ドラフト2位で広島入団。2年間の通算成績は0勝2敗、防御率4・44。左投げ左打ち。185センチ、74キロ。