<ヤクルト8-7広島>◇25日◇神宮

 ヤクルトが今季初のサヨナラ勝ちで2連勝だ。同点の延長12回1死満塁で、途中出場の三輪正義内野手(29)が自身初のサヨナラ安打を放った。独立リーグからプロ入りし6年目。出場機会を得ようと今季途中に捕手にも挑戦し、やっと手にした出場機会で結果を出した。先制したものの逆転され、追いついては勝ち越されの苦しい展開を、伏兵が一打で終わらせ、今日26日からの首位巨人戦に勢いづけた。

 シーソーゲームに決着をつけたのは、途中出場の三輪だった。延長12回、1死満塁。びびってもおかしくない場面でも、腹は据わっていた。「とりあえず行っちゃえ」。広島菊地原の初球を強振すると、打球は一直線で中前へ。「ヨッシャー」と叫んで一塁を回ると、仲間が駆け寄ってきてもみくちゃにされた。人生初のサヨナラ安打。お立ち台では畠山からロジンの粉を顔面にかけられた。「奇跡です」と思い切り笑った。

 自らを「持っていない人間」と言う。内外野どこでも守れる器用さを売りに独立リーグ・香川から入団したが2軍暮らしが続いた。今季はキャンプ中に左太もも裏を痛め、リハビリ生活。「野球は7割が失敗のスポーツ。なんでこのスポーツを選んだんですかね…」と自虐的にもなった。

 だが、諦めなかった。「やっぱり試合に出たいから」と、正捕手相川負傷後は小1以来の捕手に挑戦。野手陣に故障離脱者が続出しているだけに、捕手2人制を取りたいチーム事情も考えた。2軍戦でアピールし1軍切符を手にした。「出られればやるだけです」と執念を燃やしていた。

 そんな思いは、両軍が全野手を使い切る激動のゲームでさらに燃え上がった。7回にはバレンティンの3ランで逆転に成功。23日の試合で広島の前田智に死球を与え、左尺骨骨折で長期離脱にさせてしまったドラフト4位江村も、8回2死満塁のピンチで腕を振って切り抜けた。それでも追いつかれ、11回には勝ち越された。そんな中で宮本が11回に同点打。「みんなで追いついて、たまたま僕に回ってきた。強く振るだけでした」。三輪が全員の思いを、バットに込めた。小川監督も「彼からすると、すごい仕事をしてくれた」と褒めるしかなった。

 11回裏1死で電光掲示板が故障で消えた。そんな不吉な現象も、サヨナラ打で吹き飛ばした。三輪は「この前3タテされたので仕返ししたい」。ヤクルトはこれ以上ない勢いで、首位巨人を迎える。【浜本卓也】