<ヤクルト2-1巨人>◇28日◇神宮

 これぞ4番の仕事だった。1点ビハインドの8回1死一塁。ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(28)は「マシソンはいい投手。1球打てる球が来るかどうかだ」と集中力を高めていた。そして、初球。外角直球を思い切り振り抜いた。乾いた打球音を残し、一直線で右中間スタンドに飛び込んだ。2試合連続となる1発は、今季初の5連勝を決定づける逆転弾となった。「負けている状況で勝利をもたらせたね」とほおを緩めた。

 何が何でも打ちたかった。7回に許した先制打は、頭上を襲ってきたものだった。記録は二塁打だが、1度は失策と判断されたほどの打球処理だった。「簡単なフライではなかったけど言い訳はしない。捕るべきボールだった」。ベンチに戻ると「取り返せる状況が回ってきますように」と祈った。8回に、思いが通じた。

 そうなれば、もうバレンティンのものだった。今季の本塁打はすべて神宮球場。「ここは打席に立った時に自信がみなぎってくるんだ。構えた時の景色が見やすいのかもしれないね」と、2年連続本塁打王にとって本拠地の右打席は「パワースポット」だった。“ミス”を取り返したい思いと「大好き!」という場所がリンクし、起死回生の逆転2ランが生まれていた。

 “ミス”をバットで取り返したが、浮かれるだけではなかった。7回1失点と好投の八木には、試合後に「ライトフライ、スミマセン」と謝った。そんな心優しき主砲に、小川監督は「いい場面で打ってくれたけど、いい場面でエラーしてくれた」と冗談交じりに苦笑いしつつ「90%敗戦を覚悟する試合であの本塁打が出たりするからね。改めてすごいと思う」と褒めたたえた。巨人に同一カード3連勝で、今季初の5連勝。「いい気分です!」とノリノリの主砲のバットは、しばらく鳴りを潜めそうにない。【浜本卓也】

 ▼バレンティンが前日に続き逆転アーチ。同選手は今季5本目だが、16日中日戦の1号、25日広島戦の3号、27日巨人戦の4号、28日巨人戦の5号と、5本のうち4本が逆転弾。26日もバレンティンがV打を放っており、巨人3連戦ですべて勝利打点は99年9月3~5日ペタジーニ(ヤクルト)以来だ。今季のバレンティンは敵地で21打数2安打、打率9分5厘の打点0とさっぱりだが、神宮球場は8試合で29打数13安打、5本塁打、17打点、打率4割4分8厘。神宮球場では出場した8試合のうち5試合でV打を放っている。