<楽天3-2オリックス>◇5日◇Kスタ宮城

 闘将が神様に並んだ。楽天星野仙一監督(66)が通算1066勝目。巨人監督としてV9を達成した川上哲治氏(93=日刊スポーツ評論家)に並ぶ歴代10位タイとした。現役時は、宿敵巨人の敵将。引退後は、解説者の先輩。そして監督の師として背中を追った「打撃の神様」に追いついた。

 青山からウイニングボールを受け取ったが、最初はけげんな顔だった。「何のボールかと」。理由を聞き、やっと納得。それでも「神様に並んだんだから、めでたいんでしょうね」と人ごとのようだった。

 中日のエースとして、打倒巨人を生きがいとした。敵将の素顔を知ったのは、引退してからだ。解説者として83年からNHKで一緒になった。運転手を務めた車内で野球談議に花が咲いた。「川上さん、ONがいて、あの投手陣。楽だったでしょう?」。答えは「君が率いても3連覇、4連覇は出来ただろう。でも、9連覇は僕しかいない!」。自信たっぷりの言葉から「川上さんはONをけんかさせなかった」と、チームの和の大切さを知った。

 多くを学んだ。筆でサインをするのも、読書の習慣も、川上氏の影響だ。V9時代に川上監督が牧野コーチを傍らに置いたように、中日、阪神で故島野育夫氏(享年63)をコーチに置いた。「俺も後から知ったこと」(星野監督)だが、その島野コーチは人知れず牧野氏を訪問。参謀役の薫陶を受けたという。

 ただ、川上イズムを継承しつつ、全てを「参考にはできなかった」という。「川上さんのように勝負に徹すれば、もっと勝ち星を増やせた」という思いもある。時に「情」が出る。結果、負けても「後悔はない」。だから、通算年数では川上氏より1年あまり遅れたが、かえって誇らしい。

 ベンチ裏では「元気で、ここまでやれた。でも、これで終わりじゃない」。目指す球団初優勝は、神様を超えた先にある。【古川真弥】