安倍晋三首相(58)は5日、スポーツ各紙の取材に応じ、長嶋茂雄(77)、松井秀喜(38)両氏への国民栄誉賞を「日本に明るさをもたらす、アベノミクス第4の矢だ」と強調した。これまで巨人、大鵬は「アンチ」だったと公言してきた首相だが、2人を間近にして「スターとはこういうものだ」と、存在感の強さを再認識した。第1子が誕生した松井氏からは「子どもは3人くらいつくらなければ」と、少子化対策で“協力”を取り付けたことも明かした。

 安倍首相は表彰式で「おふたりが登場した瞬間、雰囲気が明るくなった。この明るさこそ、私たちが今の日本に求めていたもの」と話した。「日本に漂ってきた暗い雰囲気を変えたい。そんな思いも込めて賞を贈った」と明かし、「文句なしの国民栄誉賞だと思いませんか」と、胸を張った。

 松井氏とは初対面だが、長嶋氏には地元山口の野球教室で指導してもらうなど、交流を続けてきた。少年時代はサンケイアトムズ(現ヤクルト)のファン。セレモニーでも「長嶋さんが打席に立つと、アンチ巨人の私も手に汗握った」とあらためて告白して、G党のどよめきを誘った。首相は「あんなに反響があるとは」と苦笑いする一方で、2人に注がれるファンの視線から「スターとはこういうものだ」と、存在感の大きさを再認識した。

 「2人の姿を見て、相当の国民が元気を感じてくれたのではないか」。アベノミクス「3本の矢」をうたう立場から「みんなが夢に向かって頑張る。それが第4の矢じゃないかな」と述べて、表彰の意義を強調した。3月に第1子が生まれた松井氏とは、少子化対策でも“意見交換”。首相によると、松井氏は「少子化解消へ、3人以上は子どもをつくらないといけませんね」と話したという。

 06年日米野球以来、首相の立場で登場した2度目の始球式だった。背番号96のユニホームで球審を務めた。第96代首相を理由に、首相側から要請。意欲を示す憲法96条改正の数にも重なるが、首相は「結果的にそうなった。運命とはこういうもの」とけむに巻いた。2人のサイン入りユニホームと始球式のボールを贈られ「大事に保管したい」と話した。