<日本ハム3-3ヤクルト>◇23日◇札幌ドーム

 日本ハムの二刀流ルーキー大谷翔平投手(18)が、真っ向勝負で投手としての第1歩を刻んだ。

 大谷はいつまで二刀流をやるのだろうか。栗山監督に聞くと「ゆくゆくはどっちに…」と語り始め、その展望を自ら遮った。「やっぱり『ゆくゆく』という言葉を使う時点で、まだ常識にとらわれているよね」。二刀流のまま現役を終えるとは考えづらい。だが、球団も栗山監督も、そして大谷本人にも、未来は全く分からない。

 そもそも二刀流は、ドラフト後の思い付きではない。契機は昨年5月。山田GMが、大谷がいる花巻東の茨城遠征を視察した。常総学院、下妻二を相手に各4回を連投する姿を見て、同GMは「投手なのか打者なのか結論を出せなかったね。スカウト人生で初めて分からなくなったよ」と話していた。

 打者としては1年目からレギュラー、即戦力であるとみていた。投手としてはその時点で、完成度を加味すれば阪神藤浪の方が上位との見方もあったという。しかし、山田GMはまだ奥底に眠る投手の才能も感じた。「ピンチをしのいでガッツポーズが自然に出たりする。ダルビッシュのように性格に激しいモノもあるんだ、と感じたんだ」。

 夏を迎える前、栗山監督と話し合った。仮に指名できた場合に二刀流も視野に―という提案をすると、栗山監督は「おもしろい」と即答したという。大谷が、投手と野手のいずれかを選択した場合は尊重する。そうでなければ、投手と野手のどちらかを球団側から断つことはせず、ともに潜在能力を伸ばそう。数カ月後に控えるドラフト前には既に、球団幹部らも含め一定の意思統一はされていた。

 大渕スカウトディレクターは力説する。「投手とか野手に限定できない魅力がある『大谷翔平』という選手を1位指名しただけ」。それが日本ハムの評価。決してメジャーに行かせないために提案した安易な二刀流ではない。どちらかに専念すべきという声が多いことも知っている。だが、大谷がパイオニアを目指す限り、球団はそれを応援していくだろう。【日本ハム担当・高山通史】