<阪神2-1日本ハム>◇25日◇甲子園

 薄氷の勝利目前で、怒りのマグマが決壊した。日本ハム栗山英樹監督(52)が大股で、三塁側ベンチを飛び出していった。1-0の最終9回無死。守護神の武田久が、浅井の懐をえぐった1球が分岐点だった。ファウルのようにも見えたが、判定は死球。白井球審に顔面が接触しそうなほど近づき、猛抗議した。「納得できないから退場にしろ!」と詰めると約2分後、監督就任2年目で初めて退場処分を宣告された。

 不在となった直後にピンチをどんどん拡大され、逆転サヨナラ負け。連勝も3でストップした。浅井に痛がるそぶりが見えず、緊迫した展開。「あの場面で、痛がることがない死球がない」と主張し続けた。退場理由は暴言。熱血指揮官は「バカヤロー、コノヤローとは言っていない」と主張したが、振り返ってみると心当たりが一言あった。「審判やめろ!

 とは言ったかな」と反省もあったが、判定に至る経緯への不満は消えなかった。

 最高の試合運びが、土壇場でフイになった。0-0で均衡が破れずにいた5回無死二塁から、犠打で1死三塁へ。続く大野で、意表を突く初球スクイズを決めた。「決まるなら、あり得ないカウントしかなかった」。英知を絞り、高校野球のように泥臭く、決勝点になるはずだった1点を奪った。「だから、どうしても勝ちたかった。結果的に選手には悪かった」と帰路のバスに乗り込む間際まで、後ろ髪をひかれた。最後の最後まで「オレは納得していないからね!」と連呼して、栗山劇場はジ・エンド。どこまでも信念に従い「熱闘甲子園」を貫いた。【高山通史】