勝利の秘訣(ひけつ)は敵にあり-。投手と打者の“二刀流”に挑戦中の日本ハム大谷翔平投手(18)が、プロ2度目のマウンドとなる明日6月1日の中日戦(札幌ドーム)で、ライバルの阪神藤浪の投球術を参考にプロ初勝利を狙う。「打者・大谷」は、29日の広島戦で出場試合の連敗を止めたばかり。今度は「投手」として、勝てる投球を披露する。

 前夜「打者」として出場試合の連敗を止めたばかりの18歳は、「投手」へと頭を切り替えていた。30日、チームとともに札幌へ移動するため広島空港に現れた大谷は、2度目の先発マウンドとなる6月1日の中日戦へ向け「勝てれば何でもいいかな、と思っています」とプロ初勝利への渇望をあらわにした。

 「投手・大谷」のデビュー戦となった23日ヤクルト戦では5回6安打2失点。降板後に味方打線が追い付き、黒星は免れたものの「ランナーが出てからの投球、すべて」と課題を痛感するマウンドとなった。花巻東3年夏の岩手大会準決勝以来、遠ざかっている勝利投手。栗山監督は「(現状だと)160キロを投げても打たれる。160キロよりも、勝てる勝負をしてほしい。ダルビッシュ(レンジャーズ)も言っていたけれど、球速の勝負じゃないから」と前エースの言葉を引き合いに出して、はっぱをかけた。

 勝つためには、どうすればいいのか。切磋琢磨(せっさたくま)するライバルが、ヒントをくれた。26日に甲子園で実現した、阪神の高卒ルーキー藤浪とのプロ初対決。2本の二塁打を放った「打者・大谷」だが、チームは勝負に敗れて藤浪に4勝目を献上した。「ゴロを打たせていた。空振りはそんなに取っていなかったけど(バットの芯を)ずらしたり、うまく併殺を取っていた」。打席に立って藤浪流の“勝てる投球術”を体感できたことがプラスになっている。

 調整期間を利用して、クイックモーションからの投球など、今は課題とじっくり向き合っている。「1イニングでも多く投げて、中継ぎ陣に負担をかけない投球をしたい」。その先に、あるのは勝利。勝つためには、代名詞の160キロ剛速球にも、こだわらない。【中島宙恵】