<巨人6-2ヤクルト>◇10日◇福島

 慎之助で貯金20だ。「4番一塁」でスタメン出場した巨人阿部慎之助捕手(34)が3回、2試合連続の22号2ランを放ち、ヤクルト先発赤川をKOした。今季61打点目は、シーズン換算で114打点ペース。1950年、大洋の門前真佐人が記録したセ・リーグ捕手最多打点の110を上回るスピードで荒稼ぎしている。右脇腹痛も完調の主将を中心に勝ち進む。

 スタンド後方にそびえる安達太良山のごとく、阿部がどっしりと構えた。少々高かろうが関係ない。豪快にスイングした。2点リードの3回、ヤクルト赤川の抜けたフォーク。「高めのボール気味だったけど、素直にバットが出てくれた」と、2夜連続の22号2ランを福島のG党が待つ右翼席に突き刺した。山形の次は福島。みちのくで連日アーチを描いてみせた。

 貯金20。当然、打線のど真ん中に座る。気がつけば半世紀以上も塗り替えられていない大記録への挑戦が、静かに始まっている。77試合で61打点を積み上げ、このままのペースならシーズン114打点に到達。門前超えのチャンスが到来した。「長打というよりは中井をかえすことだけを考えた」と、普段と変わらぬコメント。走者をかえすという、打者としての原点を貫いて、重い扉をこじ開けようとしている。

 4番の使命は打点だけではない。野球の華である本塁打にも期待がかかる。この日、ファン投票によるオールスターのホームラン競争のメンバーが発表された。当然のように全セ代表として2試合でノミネートされた。「せっかくファンの方が選んでくれるんだから、ありがたく出させてもらうよ。お客さんに喜んでもらうのが一番だからね。出るからには、いっぱい打って、勝ちたいね」と、右脇腹の負傷後、軽症の診断に“強行出場”を即決。セ・リーグの日本人選手を代表して、屈強な猛者たちとの競演を制すつもりだ。

 ハイペースで積み上げたのは打点とチームの貯金。「61打点ね。満足してはいけないんだろうけど、まぁね。悪くはないと思います」と、少しだけ納得した。原監督も「慎之助は楽しそうにやっている。(貯金は)1つ1つの積み重ね。まだまだ、守るものはみじんのかけらもない」。認識は主砲も指揮官も同じ。このまま突き進むだけだ。【為田聡史】