<楽天3-4西武>◇12日◇Kスタ宮城

 4時間44分にも及ぶ総力戦で、西武を勝利に導いたのは、2人の「苦労人」だった。同点の延長12回、DeNAからトレード移籍後、初打席の渡辺直人内野手(32)が二塁打で出塁。三塁に進塁後、大崎の犠飛で間一髪本塁に滑り込んだ。その裏、プロ2試合目の登板の松下建太投手(25)が、ジョーンズ、マギーを抑え、プロ初セーブ。首位楽天に2・5ゲーム差に迫った。

 涼しい風に乗って、「おかえり~直人!」の声援が聞こえてきた。渡辺はかみしめるように、帽子を取って頭を下げた。「ありがたいです。仙台に来れば、いつも大きな声援をいただいて、本当に幸せだなと思います」。お立ち台はなくても、グラウンドから見上げるスタンドは、最高の景色だった。

 7日にDeNAからトレード移籍。この日に登録即、与えられた舞台は、同点の延長12回、先頭での代打だった。「途中から自分の仕事があると思って」と備えた仕事人は、3球目を右翼ライン際に二塁打。犠打で三塁進塁後、大崎の犠飛で間一髪本塁に滑り込んだ。かつて、プロ野球人生をスタートさせた古巣、本拠地でレオ戦士としての1歩を刻み込んだ。

 勝ち越した直後、マウンドに上がったのは、渡辺監督が「隠し玉。ジョーンズ、マギーへの秘密兵器」と指名した、プロ2試合目の松下だった。銀次に中前打を浴びたが、ジョーンズに対し、11球にも及ぶ勝負の末、見逃し三振。マギーを中飛に抑えた。早大から09年ドラフト5位で入団するも、右肩痛に苦しみ、「今年ダメならクビ」と崖っぷちだった男が、総力戦で初セーブを挙げた。

 勝利のハイタッチ中、選手からは雄たけびが上がった。この一戦に懸ける、強い思いの表れだった。渡辺監督は「競ったゲームの中で、最終的に粘り勝てた。(渡辺直は)初打席でプレッシャーもあっただろうけど、よく仕事をしてくれた。(松下も)タフな状況で、よく投げてくれた」と殊勲の2人に賛辞の言葉を並べた。前回対戦では乱闘騒ぎもあったが、グラウンドでの勝敗でケリをつけた。【久保賢吾】

 ◆渡辺直人(わたなべ・なおと)1980年(昭55)10月15日生まれ。茨城県出身。牛久-城西大-三菱ふそう川崎を経て06年大学・社会人ドラフト5巡目で楽天入団。10年12月に金銭トレードで横浜移籍。今月、長田との交換トレードで西武移籍。173センチ、73キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸5000万円。

 ◆松下建太(まつした・けんた)1987年(昭62)8月17日生まれ。広島県出身。明徳義塾では甲子園に3度出場。早大では東京6大学リーグ通算7勝3敗。父建夫さんは76~78年に広島に所属した元プロ野球選手。09年ドラフト5位で西武入団。179センチ、83キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸600万円。