<日本ハム14-3西武>◇15日◇札幌ドーム

 日本ハム武田勝投手(35)が、スーパールーキーの代役を完璧に務めた。この日先発予定だった負傷の大谷に代わり、登板予定を変更してのマウンド。序盤からの大量援護に守られ、6回2安打1失点で3戦ぶり6勝目を挙げた。自身も練習中の打球直撃で骨折の経験があり、同じく傷心の後輩を快投でフォロー。今季初の中5日の登板間隔ながら、エースの仕事をした。

 アウトの数だけ、力がみなぎった。1回。武田勝は先頭打者の西武ヘルマンを内角へのスライダーで空振り三振に切ると、懐かしい感覚に襲われた。「久しぶりに自分らしいなと思いました」。2回に暴投で失点するも、許したのはこの1点のみ。丁寧に低めにボールを集め、6回2安打の好投。今シーズン初の中5日の調整も、なんのその。「メンタルは冷静で、大胆に攻められた」と、相手に付けいる隙を見せなかった。

 勝利の裏に、秘めたる思いがあった。当初の先発予定はルーキー大谷。11日にアクシデントで骨折した影響で、急きょ登板を任された。栗山監督には嫌な顔せず快諾。そのわけは、自身の苦い経験からだった。「その時は僕が救ってもらったので」。08年、試合前の練習中にフリー打撃の打球が直撃。左手親指の骨折で、予告されていた同日の先発を回避した。当時の記憶が、突き動かした。

 周囲への感謝の思いが、復調への道筋を照らした。今季はスタートダッシュでつまずき、持ち味の制球力にも苦しんだ。なかなか白星がつかず苦悩の日が続いた。「何よりもまわりの人たちが悩んでいるので、何とかしたかった」。再起を懸け、もがき続けた末に、本来の姿を見つけ出した。

 6勝目を挙げ、後半戦へ弾みがついた。今回、登板間にブルペン入りは1度だけ。通常は2度だが、緊急登板の影響で最低限の回数を強いられた。想定外の事態にも「こんなに短期間で修正出来たので、今後にもつなげていけたら」と、収穫を見いだした。4年連続2ケタ勝利を挙げているエースに、頼もしさが戻ってきた。【田中彩友美】