今季限りでの現役引退を決意していた中日山崎武司内野手(44)が29日、名古屋市内で会見し「引退」を表明した。現役野手最年長に涙はなく、会見も含めた1時間以上の質疑応答は独演会。涙なし、笑いばかりという話術で27年の現役生活を振り返った。「一緒に花道を飾りたい」-。目指すは、今季限りで退任する高木守道監督(72)との奇跡の逆転Vで、合言葉は「守道と花道」!?

 涙は似合わない。永遠の若大将ならぬ球界のガキ大将が笑顔でひとあし早くファンにサヨナラ会見だ。「今シーズンをもって引退することを決意しました」。始まりは形通り。だが、大好きなスーパーカーばりにエンジンが暖まると中日名物“守道劇場”に負けない“タケシ劇場”開演だ。

 26日巨人戦後に2軍降格を告げられ即、引退を決めた。その場で高木監督、電話で師匠と慕う前楽天の野村監督らに報告。最も難航したのは絶対反対だと主張する長男との話し合いだった。「今日も会見して帰ったら何言われるかと思ってましたけど、学校の合宿で2日間家にいないのでホッとしてます」。

 ここまで通算1833安打、403本塁打。自らを「1つ、2つ足りない男」と表現した。理由は「27年やって2000本打てねぇんだと」。その原因のひとつはこびない生き方を貫いたから。「正直言ってメチャクチャ使いにくい選手だったと思いますよ。唯一の自慢は、こんだけやんちゃして(上に)ボロカス言って27年もやったのは自分だけ。いろんな人と衝突した。監督室でバット投げたこともあるから」。ただそれが山崎武司。「今でもケンカは負けねぇんだけど」。さすがにもうケンカはしないが、曲がったことは嫌い。この時期の引退会見も「ケジメ。ファンとの約束だから」。ダメならやめる-。公言していたから即決し、すぐ会見した。

 3つ年上の盟友山本昌には1年でも長く現役を続けるよう求めた。「一緒にやめたくなかった。話題を持っていかれるからね。スター性は俺の方があるんだけど」。そしてかわいい後輩の阪神福留には「孝介には言葉よりもモノで頼むぞと言った。マネーだぞと」。最後には「3年10億のオファーが来れば、ごめんなさいと現役復帰する」…。迫り来る寂しさは、笑いでつつんでそっと隠した。

 残る契約期間で2軍からはい上がり、有終の美を飾るつもりだ。拾ってくれた高木監督も今季限りでの退任が決まっている。「こんなこと言ったら怒られるかな?

 いっしょに花道を飾りたい」。合言葉は“守道と花道”か-。「山崎武司らしい終え方をしたい」と戦い抜く。【八反誠】

 ◆山崎武司(やまさき・たけし)1968年(昭43)11月7日、愛知県知多市生まれ。八幡中から愛工大名電を経て86年ドラフト2位で中日入団。96年本塁打王。03年にオリックスに移籍し、05年から楽天でプレー。07年に本塁打、打点の2冠。昨季から中日に復帰。通算2237試合出場で1833安打、403本塁打。181センチ、105キロ。右投げ右打ち。