<DeNA2-8巨人>◇24日◇横浜

 スランプ脱出だ。09年以来の7番に入った巨人坂本勇人内野手(24)が1点リードの4回、12号3ランを放った。自己ワーストの23打席連続無安打で迎えた打席。DeNA小林寛の変化球を巧みにさばいて、左翼席に落とした。肉眼ではうかがい知れない工夫を、独特の1本足打法に施していた。この一打が決め手となり、チームの連敗も3で止まった。

 やっと見えた出口を最高の形で抜け出した。坂本が113キロの内角低めカーブをすくうように捉え、腰回転で左翼席中段まで運んだ。「監督やコーチ、阿部さん、由伸さん、村田さんと、いろんな方にアドバイスをいただいた。打てて良かった」。久々のHランプに感謝した。

 安打製造機の歯車が狂っていた。17日の中日戦での中前打を最後に5戦連続で無音。4年ぶりに7番に座った第1打席も右飛。11年の19打席連続を超える23打席連続まで自己ワースト無安打記録が伸びた。

 それでも好機を託された。原監督は「小さくならずに打てとね。サインはホームラン。見事にサイン通りだった」とジョークで振り返った。坂本も「いい結果が出ていないのに打てのサインを出してくれた。気にせず思い切りいった」と“超級サイン”に応えた。

 左足で弧を描き、タイミングを計る独特の1本足打法。投手のセット時や球種で左足の滞空時間は変わるが、これまで同じ打席でその誤差は0・1秒以内だった。だが今回不振時は0・2秒以上の差があり、間合いが狂っていた。

 この一戦は修正されていた。左翼弾直前の直球に対し、左足を0・73秒上げて間をつくった。そしてカーブに対し、0・81秒で間合いを計り1発。前日の試合後に兆しを感じていた。「タイミング、トップの位置を直して、ボールの見え方が良くなっていた」。天性の感覚を取り戻した。

 不振脱出へ、きっかけを模索し続けた。高橋由のバットを今週からバットケースに忍ばせた。重さは同じ915グラムだが、長さは34インチより短い33・5インチ。他人のバットを借りて実戦に臨むことは珍しい。さらに910、905グラムと5グラムずつ軽い2本も準備した。

 ベンチに戻り、仲間から激しく頭をたたかれた。みんなが待ちわびていた。「この1本をきっかけに上げていきたい」。坂本の復調が連覇への促進剤になる。【広重竜太郎】