<阪神1-2広島>◇1日◇甲子園

 阪神西岡剛内野手(29)の「闘魂」がチームの支えだ。悔しい敗戦後、テーピングする左手からは血がにじんだ。とにかく必死だった。3回2死。秋山がエルドレッドに投げると、二塁走者の丸が三塁に突進する。不慣れな守備位置だ。それでも、一目散に三塁に入り、倒れながらも間一髪で三盗を防いだ。その瞬間だ。丸のスパイクが西岡のグラブをえぐる。左手に痛みが走った。

 「(手が)切れたんですけど大丈夫。(三塁も)できる限り全力でやるだけ。サードで固定されるわけじゃない。でも、サードをやるときも一生懸命、セカンドをやるときも一生懸命」

 三塁に入った際、ベースに左膝を強打していた。直後の3回の打席前。ベンチ裏で治療し、グラウンドになかなか現れない。長らく西岡が苦しんできた左膝痛の再発か…。周囲は気をもんだが、痛めたのは左手だった。手負いの状態だったが、今井からライナーで右中間へ。二塁打を放ち、同点機を築いた。真骨頂はここからだ。リードを取り、2番上本の詰まった打球が二塁菊池の頭上にフラフラと上がる。迷いはない。菊池のグラブに届きそうな打球だったが、その時には西岡は本塁を目指していた。

 「守備位置と打球の判断です。菊池君は守備範囲が広いのも頭に入れて、いいスタートを切れたかな。点が入れば、勝ちに持っていくこともできるから」

 好判断の好走塁で同点のホームを踏んだ。吉竹三塁コーチも「難しいプレー。なかなかできない。あのへんが持ち味」と脱帽。3回の攻撃は和田阪神が目指す野球だった。西岡の生還後には適時打を放った上本も二盗に成功した。1、2番コンビの機動力が光った。西岡は言う。「上本も打ったあとにスチールして。野球は負けたけど、1、2番として、今日はいい方向が見えた。勝てる野球を早くしたい」。チームが停滞するなか、スピード野球という収穫もあった。【酒井俊作】