<ソフトバンク2-1日本ハム>◇14日◇ヤフオクドーム

 「打てそうで、打てない」。いらだちが、力みに変わった。日本ハムは、ソフトバンク20回戦で逆転負けを喫し、再び自力でのクライマックスシリーズ(CS)進出の可能性が消滅した。初対戦となったソフトバンク先発のオセゲラ投手(29)に、打線は6回までわずか2安打。相手の幻惑投球にまんまとはまり、攻め手を欠いたまま痛恨の1点差負けとなった。

 球場を引き上げる選手達の表情は、キツネにつままれたようだった。難しい球じゃないのに、なぜか打てない。今季途中加入の軟投派左腕は、想像以上に難敵だった。ソフトバンク、オセゲラの前にわずか2安打。四球と盗塁でチャンスを広げた4回、小谷野の中犠飛で1点を奪うのがやっとというありさまに、栗山英樹監督(52)は「腕が遅れてきて、イメージとボールが違った。途中から投球パターンも変えてきたし、なかなかチャンスを作れなかった」と悔しがった。

 攻略法はシンプルだった。直球は130キロ台中盤で、カーブの制球もいい。だが、驚くような球はない。ボール球をきちんと見極めて好球を待つ。「ちゃんとボール球は見極められていたけど、チャンスボールで力んでしまった」(渡辺打撃コーチ)。2回は3者連続で3ボールから内野ゴロに打ち取られるなど、相手の術中に見事にはまってしまった。

 「クイックに1・5秒以上かかる」というデータもあった。現在リーグトップ35盗塁の陽岱鋼を筆頭に、20盗塁の西川、16盗塁の中島と足技はお手の物。オセゲラは投球モーションも大きく、走者を出せば、いくらでも得点チャンスを広げることはできたはずだった。だが、出塁できたのはたったの4人。攻撃の糸口をなかなか作れなかった。

 3戦連続1点差勝利から一転、6連戦最初の試合で1点差の逆転負けを喫し、悔しさは倍増だ。自力でCSへ進出する可能性が再び消え、昨季覇者は崖っぷち。残り19試合。「もう、うちは連勝するしかないから」。追い込まれた日本ハム栗山監督の悲痛な叫びが、球場の薄暗い通路に響いた。【中島宙恵】