<日本ハム0-5楽天>◇23日◇札幌ドーム

 楽天が若手中心でマジック減らしに成功した。ルーキー宮川将投手(22)がプロ初先発で7回1安打無失点に抑えれば、正捕手の嶋に代わってマスクをかぶった伊志嶺忠捕手(28)が好リード&プロ初本塁打で勝利へと導いた。藤田-松井の不動の二遊間にも若手が起用された。ベテランを休ませつつ、控えに経験を積ませる星野采配でズバリ4連勝。2位ロッテが敗れたため、優勝マジックは2つ減って「3」となり、明日25日にも悲願の初優勝が決まる。

 試合後、星野監督は問われる前に口を開いた。「ビックリだな!

 宮川は、よく腕が振れていた。期待以上なんてもんじゃない。想定外だよ」。そう言って、報道陣を笑わせた。先発陣に故障や不振が続き駒不足の中、抜てきしたルーキーが7回まで投げ、日本ハム打線をわずか1安打の無失点。しかも、5回まではノーヒットだった。星野監督は、投げ終えた右腕をベンチで出迎え握手を求めた。5四球に「四球以外は完璧だ」とねぎらった。

 終わってみれば、5-0の快勝だ。だが、試合前の心境は「負けてもしゃあない。選手には、そんなこと言ってないけど」だった。先発投手だけじゃない。スタメンマスクは第2捕手の伊志嶺。藤田-松井の二遊間は、3年目の阿部と4年目の西田に代えた。さらに、ジョーンズをDHではなく一塁で起用。DHには、三塁手のマギーを入れた。定番オーダーを大きく替えたのには、いくつもの思惑があった。

 まずは、レギュラーを休ませるため。約2週間の遠征中で、この日は7連戦の3戦目だった。しかも、試合後は24日からの西武戦へ向けて札幌→羽田の空路移動があり、さらに羽田空港から東京・立川までバス移動が控えていた。星野監督は「試合がなくて移動だけの日に(練習を)休んでも、気は抜けるが結構しんどい。試合がある日に(出場せずに)休んだ方が、ある程度緊張感がある分、休んだ気になる」と説明した。

 同時に、若手に優勝前の雰囲気を味わわせた。「ペナントの、この時期に。良い経験だ」。ジョーンズの一塁起用についても「それ(日本シリーズ)もある」と話した。DH制のない試合もある日本シリーズまで見据え、ジョーンズに一塁守備を経験させた。

 大胆な手が打てたのも、試合前の時点で2位ロッテと8・5ゲーム差と余裕があったからだ。勝った以外の収穫もある。星野監督は「長年やってきて感じるが、チームの雰囲気が若いヤツに伝わっている。いつも『前に出ろ』と言っているが、今は忠実に守っている」と手応えを口にした。

 チーム全体が目的を持って戦っているから、普段と違う布陣でも結果を出せた。マジック点灯前の8月、「残り20試合になったら、みんなガチガチになるぞ」と心配していた。残り13試合だが、緊張とは無縁だ。たくましいイヌワシたちが、明日25日にも頂点をつかむ。【古川真弥】