<セCSファイナルステージ:巨人3-1広島>◇第3戦◇18日◇東京ドーム

 たまたまじゃない!

 やはり頼れるキャプテンだ。巨人阿部慎之助捕手(34)が3回に同点、5回に追加点となる2本の適時打を放った。CSファイナルステージの最初の2戦は不振だったが、復調。日本シリーズ進出を決める一戦に大きく貢献した。

 痛みも苦しみも吹き飛んだ。1点を追う3回2死一、二塁。広島野村の108キロのスローカーブに振り上げた右足が着地した。まだ遅球は来ない。だが腰は粘り、右手で拾うような感覚で中前へ同点打を運んだ。5回にも適時打で広島の戦意をそいだ。「肝心なところで打ててなくて何とかしなきゃと思っていた」。大振りだった1打席目の反省から、バットを短く持ち直して主将の責任を果たした。

 たまたま、だった。大当たりのCS。16日の初戦で股間に打球が直撃。試合前は「だいぶいい。でも右の玉がまだちょっと。あ、タマって読まないで下さい。ギョク、ですよ。右玉でウギョクって読んで下さい。少しは品があるでしょ」と豪快に笑った。試合中は3回の守備で左太ももに打球が直撃し、再び苦悶(くもん)した。だが2本の適時打も、違う意味で大当たり。「当たり日だったね」と笑わせた。

 活躍はたまたま、ではなかった。シーズン終盤から不振でCSも最初の2戦で6打数1安打。左肘を上げ下げして間合いを修正しようとしたが、はまらない。だがこの日の打撃練習前に篠塚和典氏(日刊スポーツ評論家)と話す中でヒントを見つけた。「右足を少し高く上げて、足裏を投手に見せるように窮屈に上げることで、左足に体重が乗るようになった。コレだと思った」と突破口になった。

 キャプテンとしてチームの強さを感じる3連勝。「去年もCSで3連敗して、しんどい思いをして日本一になった。短期決戦で負けると流れを持ってくるのが難しいことを、みんなが分かっている」。40年ぶりの日本一連覇へ、期待されているものは分かっている。試合後の記念撮影。隣の原監督から言葉を掛けられた。「長打が出る気がしないな。でも日本シリーズで出るよ」。「そうですね。頑張ります」。阿部らしい豪快な打撃で、たまたまではない、必然の連覇で玉座に座る。【広重竜太郎】