阪神が今季、国内フリーエージェント(FA)権を取得している久保康友投手(33)に対して、今後の交渉で来季の「先発」を用意する方針であることが22日、分かった。今年は抑え役に抜てきされたが機能せず、複数の首脳陣が来季は先発に戻す構想を温めていることが判明。フロントも現場の意向に沿う形で、FA交渉の席上で引き留めの材料として提示する方向だ。

 今季開幕の守護神を務めた久保が来年は先発に復帰する。和田監督直々に大役に指名されたが、救援の投球スタイルを模索するなかで苦闘した。終わってみればシーズン6セーブにとどまった。来季の構想を練るなかで、首脳陣の1人は「(来季の)抑えは無理だと思っている。久保は、ちょっと形にこだわりすぎるところがあった。来年は先発になるだろう」と説明した。

 長年、絶対的な守護神だった藤川が米大リーグ・カブスに移籍し、今年は久保が代役のクローザーを務めた。だが、別のコーチも「久保の適性は先発だ。リズムのなかで投げる投手だから」と話すように、変化球を多用した総合的な投球術で勝負する久保は先発タイプだろう。先発の柱であるメッセンジャーの流出が濃厚で、人員が手薄になる状況が予想される。

 久保は今年4月に国内他球団への移籍が可能なFA権を取得しており、球団側は慰留する。来季の先発要員と見込んで、今後の交渉にあたることになる。球団首脳も「現場の意向がそう(先発)なら、テーブルの上でも、そういう話はできる」と認めた。阪神移籍後は10年に14勝を挙げるなど先発で力量を見せつけてきた。投手として、いかに最大限のパフォーマンスを発揮するかを常に追求する久保にとっても、進路を決める判断材料になりそうだ。

 阪神は明日24日のドラフトで即戦力投手を狙い、来季の守護神候補として韓国サムソン・呉昇桓投手(31)の獲得を目指す。だが、即効性のある“補強”は適材適所の配置だろう。屈辱的な2位に終わった虎にとって「先発久保」も巻き返すための策になる。