巨人が20日、広島市内のホテルで、広島からFA宣言した大竹寛投手(30)と初交渉する。3年5億円(推定)を提示するものとみられ、今日にも「巨人大竹」が誕生することになりそうだ。原辰徳監督(55)が高く評価する右腕の加入で、巨人のリーグ3連覇に向けての動きが加速する。

 決め手は原監督の熱意になる。他の球団が大竹に示した条件は破格とも言えるもの。契約年数も年俸も、巨人の3年5億円という条件が最高というわけではない。しかし指揮官が熱望する気持ちだけは別だ。その思いが、大竹の気持ちを揺さぶる。この日、川崎市内のジャイアンツ球場で行われた秋季練習に参加した原監督は「吉報を待つだけですね」と静かに話した。

 今は待つ身だが、大竹獲得に向けて球団内で真っ先に希望を示したのが、原監督だった。数年前から、対戦するたびに、いい投手だと認めていた。今回、その高い評価を聞いて、フロントも大竹の調査を行った形。「チームにとって必要とあらば動きます」と言った監督の期待は、伝言か直接電話の形で大竹にも届けられる。

 大竹は埼玉県出身で、在京球団への志望が強いと言われる。また今季、広島から巨人にトレード移籍した青木とも仲が良く、巨人のチーム内の雰囲気や練習環境の良さは、すでに伝わっているものとみられる。指揮官のあつい期待と、優勝を常に狙えるチーム力は、大竹を強く引きつける材料になるはずだ。

 今オフ、巨人の補強の最重点ポイントが先発投手だった。開幕ローテーションの6人は、宮国が負傷してリハビリ中。沢村はリリーフに転向してシーズンを終えた。日本シリーズでは杉内、ホールトンが打ちこまれ、信頼できる先発は内海と菅野だけだった。ドラフトでも即戦力投手の獲得を逃しており、原沢敦球団代表兼GMは「ウチの補強ポイントに合うかどうかを判断し、やるべきことをやります」と決意を見せていた。大竹の獲得はそれだけの重大使命だった。

 大竹が広島でつけていた背番号17は香月が背負っており、球団からは13と21から選べるように提示される見込み。いずれにせよ、他球団よりも低い条件で大竹は飛び込んで来ることになる。そんなジャイアンツ愛に満ちた男の加入を歓迎しないわけにはいかない。2ケタ勝利の計算が立つ右腕。もろ手を広げて迎え入れる。【竹内智信】

 ◆大竹のFA交渉経過

 広島から年俸1億4000万円を提示されていた模様だが、12日に「他球団の話を聞いてみたい」とFA権行使を表明。14日に公示。16日にソフトバンクが広島市内で初交渉し、出来高払いなど含めて4年最大8億円を提示。小川編成・育成部長の「日本一になるために大竹君の力が必要」というラブコールに、大竹は「チームとして勝利に向かう方向性を強く感じた」。楽天は18日に広島市内で交渉し、出来高を含め3年6億円前後の条件と星野監督の「真っすぐで強気に押すスタイルでローテを守ってほしい」というメールを提示。大竹は「緊張しました。すごくありがたかったです」と話した。(金額は推定)