阪神中村勝広GM(64)が19日、FA宣言した久保康友投手(33)との残留交渉で異例の“謝罪”を行った。宣言前の提示を上まわる2年総額2億5000万円を提示。来季の必要戦力だと訴えた上で今季、ストッパーとして起用せざるを得なかったチーム編成について謝ったという。今後、DeNAなど他球団との交渉を経て出される久保の結論にどう影響するのか。(金額は推定)

 久保の表情が緩んだ。FA宣言後、初めて行った阪神との残留交渉は約30分で終了した。高野球団本部長、中村GM、坂査定担当と話し合った後、会見場に現れたFA右腕は猛虎の熱意を感じ取っていた。

 久保

 GMから必要だと思っていると言われて、非常にうれしく思っています。ぜひ、タイガースでやってくれと言われました。

 提示額も宣言前の2年2億円から、2年2億5000万円に上積みされた模様だ。そして、それ以上に久保を笑顔にしたのは編成トップの中村GMが直接、必要だと熱く訴えてくれたこと。当の中村GMが残留交渉の様子を明かした。

 中村GM

 適材適所という意味ではクローザーがどうだったのかなと。みこしを担いでもらった。編成の責任者としてわびておいた。

 何と、FA交渉の場では異例の謝罪を行った。久保は今季を、メジャー移籍した藤川の穴を埋めるストッパーとして迎えた。首脳陣に依頼されての挑戦だったが、結果が出ずに2軍落ち。以降は中継ぎという形でシーズンを終えた。開幕前から久保のリリーフへの適性を疑問視する声はありながら、それを強行せざるを得なかったのは編成の責任があると考え、中村GMは謝罪したという。

 ただ、久保は先発か、リリーフかについて「それを言ってしまうと働き場所が限定されてしまう。仕事があるというのが一番です」と、どちらにも対応する姿勢を見せた。中村GMにも「新たな自分を発見できた」とリリーフ挑戦を前向きに語ったという。

 中村GM

 先発にかなりのこだわりがあるのかなと思っていたが、勝つために必要とされる選手でありたいということだった。(来季は)先発の一角を占めてもらうことになると思うけど、それだけじゃないということはありがたい。球団としてはかなり踏み込んでの誠意だと思う。

 条件面の上積み、先発手形、必要戦力だという熱意、さらに謝罪まで加えた残留交渉。DeNAなど獲得に乗り出すことを表明している他球団と交渉した後になる久保の決断に、注目が集まる。【鈴木忠平】