後ろに立つんじゃねえ!

 新守護神は“ゴルゴ13”だった-。阪神中村勝広GM(64)が23日、韓国から帰国し、韓国サムスンのセーブ王・呉昇桓投手(31)との契約について語った。前日22日、韓国へ飛んで契約を交わし、会食したという。焼き肉を食べながらの3時間で見えた呉昇桓の人柄をこう表現した。

 「人をあまり寄せつけない雰囲気があるな。勝ち気、強気、芯の強さというか風格、オーラを感じるな」

 長い交渉を経ての契約締結というおめでたい席にもかかわらず、呉昇桓は他人を寄せつけないオーラを発散していた。それは、プロ野球界で監督、GMを務め、何人もの一流選手と接してきた中村GMが驚くほどのオーラだったという。

 さらに食事が進むにつれて、仕事への意識の高さもうかがえたようだ。

 「あまり話す方ではないけど、スパイクとか、野球の用具のことなどを話したかな。焼き肉もあまり食べていなかったし、お酒も最初の乾杯で口をつけた程度だった」

 無口だが、口を開けば仕事の話題。むやみにがっつくこともなく、酒もほとんど飲まなかったという。この様子から思い浮かぶのは人気漫画「ゴルゴ13」だ。

 主人公デューク東郷、通称ゴルゴ13は国際的なスナイパーで、国籍も、年齢も一切不明。警戒を怠らず、無口で、常に単独行動する一匹おおかみだが、仕事の成功率は99・9%を超える…。プロフェッショナルの究極を描いた作品で、実写版では高倉健が演じた。中村GMの口から語られた人物像はまさにゴルゴ13に重なるものだった。

 木戸、嶌村両GM補佐、山本アマスカウトの尽力もあっての争奪戦勝利。今後は12月上旬に韓国で調印式が行われる予定。早くも職人気質をうかがわせる快速右腕が、ゴルゴ13並みの成功率で仕事をしてくれれば、虎の快進撃は間違いなし。ふっ、だから後ろには誰も立つなよ-。【鈴木忠平】

 ◆呉昇桓(オ・スンファン)1982年7月15日、韓国生まれ。04年ドラフトでサムスンに入団。05年に新人王。韓国球界で5度セーブ王。通算444試合で28勝13敗、防御率1・69、同国最多の277セーブ。WBCは3大会連続で韓国代表。178センチ、92キロ。右投げ右打ち。