マー君の夢がようやく実現する。楽天田中将大投手(25)が、新ポスティングシステムを利用してのメジャー挑戦を球団から容認された。25日、立花陽三球団社長(42)がKスタ宮城で容認会見を開き、同日、日本野球機構(NPB)に申請を行った。楽天が上限2000万ドル(約20億円)で設定した譲渡金を通知し、今後はメジャー10球団以上が獲得に乗り出すとみられる。なお、移籍が決まれば、田中は球団に施設整備などを目的とした「寄付」を行うことを立花社長が明かした。

 田中の表情は、晴れ晴れとしていた。ついに、球団からメジャー挑戦を認められた。「球団、ファンには言葉で表せないぐらい感謝している」と喜びをかみしめるように、話した。17日に挑戦の意思を表明してから8日間。「ひとまず前に進んで良かった」と、柔らかい笑顔で言った。

 紆余(うよ)曲折を経てたどりついた。新移籍制度をめぐり、NPBと選手会の見解の相違に始まり、NPBとMLBの交渉難航。従来の制度であれば、入札額が75億~100億円になる見通しとの現地報道もあった。最後は譲渡金の上限2000万ドル(約20億円)が設けられ、低すぎて適正な評価額ではないと、楽天が容認に難色を示した。

 埋まらない金額を埋めたのは田中だった。球団に「寄付」をすることになった。金額や用途の決定は移籍先決定後になる。立花社長は「田中選手からも、『ここまで私を育てていただいた球団、ファンの皆様、そして宮城をはじめ東北の皆様に対して、できる限りの恩返しをしたい。魅力ある球場、選手の環境面での整備を始め、引き続きイーグルスが東北のファンの方々に愛していただける球団であるように、できる限りの協力や寄付をしたい』というありがたい言葉を頂きました」と、田中から提案があったと明かした。田中は「ファンの方々にもそうですし、今すぐにとかではなくて、長い目で見ていろいろとやっていけたらな」と、継続して協力する意向を示唆した。

 田中の契約は総額1億ドル(約100億円)近い大型契約になるとみられる。他にもCMなどの収入があり、まとまった金額が「寄付」される可能性は十分。過去に例のない「寄付」が、容認という結論に、少なからず影響したはずだ。

 いくつものハードルを乗り越え、ついに田中が複数球団と交渉できるフリーエージェント(FA)に近い制度の恩恵を受けられる。早ければ一両日中にも米球団との交渉が解禁となる。資金力豊富なヤンキースやドジャースが有力候補とされる。球団選びのポイントを問われると「それはこれからです」と条件などは今後煮詰める。「入札してくださる球団が多ければ多いほど、選択肢が広がると思うので。どうなるか分かりません」と、待ち受ける移籍交渉を楽しみにしていた。

 日本を代表するエースが海を渡る。メジャーでは、どのような姿を見せたいかと問われ「特に変わらないです」と即答した。楽天での7年間で確立したスタイルを、新天地でも見せるつもりだ。「チーム、ファンの皆さんに支えられてここまで来られた。そこが基盤になっているというのは間違いないので。胸にしっかり刻み込んでこれからもやっていきたい」としみじみと話した。ファイナルアンサーは、田中個人と球団、双方にとってのクリスマスプレゼントになった。【斎藤庸裕】