14年版藤浪がベールを脱いだ。阪神藤浪晋太郎投手(19)が15日、兵庫・鳴尾浜球場で今年初のブルペン入りだ。捕手を中腰にさせて34球。昨年の秋季キャンプで取り組んだインステップ矯正もバッチリで、視察した中西投手コーチも進化を確信。肉体改造の効果も示した。昨年新人ながら10勝を挙げた右腕のさらなるパワーアップ。いやあ、シーズンが楽しみや~。

 幾多の視線には見向きもせず、自分の世界に入り込んだ。午前11時9分。気温11度まで上がった鳴尾浜で、藤浪がブルペンに入った。捕手小豆畑を中腰にさせ、すべて直球で34球。歯を食いしばり、140キロ以上は出ていそうなスピードボールに、オフの成果が凝縮されていた。

 藤浪

 暖かかったし特に(今日に)意味はないですけど。今の状態で思い切り投げました。腕が振れているし、この時期にしては悪くなかったと思います。

 成長を込めた軌道だった。新人合同練習用の緑色ビブスに身を包んでいた1年前とは立場が違う。先発ローテの3本柱として計算され、シーズンを通した活躍が期待される。進化しなければ、怪物といえど、2年目の壁にぶつかる恐れがある。だが、そんな心配は無用とばかりに、驚異の球を次々と投げ込んだ。昨年は新人合同自主トレ初日の1月10日に初のブルペン入り。そのときも藤浪のボールを受けた小豆畑が舌を巻いた。「まだまだ上がってくる中であれくらい投げられるのはすごい。去年とは全然違う」。1年前との違いは明らかだった。

 昨年秋季キャンプで取り組んできたインステップの矯正も順調だ。踏み出す足は一定で、ブレも少ない。視察した中西投手コーチも「安定していたし、ばらつきもなかった」と合格点を与えた。シュート回転のボールをなくし、故障のリスクも避ける。完成に近づく14年版フォーム。何より藤浪自身が「感触は悪くなかったですね」と手応えを口にした。

 ズシリと重いボールは力強さが増した証拠でもある。オフは肉体改造に精を出し、体重は88キロから90キロに増えた。オフは「できる限り間食を取って1日6食。空腹の時間をつくらないようにしたい」と胃袋をいじめた。食トレ筋トレの効果てきめんだ。

 藤浪

 自分ではよく分からないけど、大きくなったと言われる。トレーニングの効果が出ているのかな。

 今後は気温を見て、体の調子と相談しながらブルペンに入る。「今年はキャンプに合わせる、ということではないと思っている」と自覚も十分。目指すのは虎Vへの使者となること。甲子園で育った怪物は、どこまでたくましくなるのか。藤浪が今年も主役だ。【池本泰尚】

 ◆藤浪のインステップ矯正

 故障防止とシュート回転して左打者に打たれる弱点を克服するため、昨秋の安芸キャンプから本格的に着手。本来の位置から約3足分三塁側に着地していたステップを矯正中。現在は1足から1足半ほど矯正されている。キャンプでは1日おきに中西コーチが個別指導。ポイントを(1)右膝の使い方(2)プレートの足のかけ方(3)上半身のひねり方の3点に絞り、左足を過度に意識させない指導が行われた。この日は履いていなかったが、右足と左足で歯の本数が異なる特注スパイクも着用した。