速い、重い、打ちづらい-。阪神の新ストッパー呉昇桓(オ・スンファン)投手(31=韓国・サムスン)がベールを脱いだ。7日、宜野座キャンプで初めてブルペン入り。首脳陣、セ・リーグ全5球団のスコアラー、100人近い報道陣が見守る中で、打者を惑わせる独特のフォームから剛速球を繰り出した。変化球も含めて61球。豪快なデモンストレーションにライバル球団「007」は騒然となった。

 カメラの砲列の中、呉昇桓がブルペンにやってきた。筋肉ではち切れそうな体を揺らして、のっし、のっしとマウンドへ。正午前。韓国からやってきた新ストッパーが、ついにベールを脱いだ。

 「ズドンッ!」

 ミットをたたく衝撃音が響き渡る。捕手を立たせて15球を投じ、座らせて本格投球開始だ。「石直球」と形容されるストレートは確かに速く、重そうだ。高速スライダー、スラーブ、そして、韓国では使っていなかったツーシームも投げた。淡々と61球を投げ終え、至って冷静だった。

 「試合もブルペンも、周りの視線を感じてやるタイプではない。きょうはバランスを意識した。そういう点では満足しています」

 集結したセ・リーグ5球団の「007」は騒然としていた。開幕戦の相手で宿命のライバル巨人の森中スコアラーは脱帽した。

 「真っすぐはすごく重そう。ブルペンでもポーカーフェースで感情を出していなかった。淡々と投げていて調子がいいのか、悪いのか読めない」

 中日井本スコアラーも「ボールに力があって、キレより重さがある。初日であれだけのボールを投げているんだから、開幕はもっとすごいんでしょう。打ったところで重いから飛ばない。出させないようにするしかない」とお手上げだ。

 球威もさることながら、打者を幻惑する技術も特筆ものだ。振り上げた左足は1度着地したように見えて、そこから2足分ほど前に踏み出す。タップダンスのような足の運びに、打者は振り出しのタイミングに戸惑うはずだ。本人は「個人的に武器だと思ったことはない。自然とこうなった」と言うが、森中スコアラーはその巧妙なトリックにも目を光らせた。

 「打者は映像を確認しないと、タイミングが取れないでしょうね」

 新戦力は褒めろ。「007」の賛辞はある程度、割り引いて受け止めなければならない。それにしても隠せない、警戒信号の強さ。速く、重く、打ちづらい。呉昇桓は本物-。そんなレポートが各球団に届いたはずだ。【鈴木忠平】