<オープン戦:楽天1-0中日>◇8日◇倉敷

 危機を救うピースは又吉だ!

 中日ドラフト2位の又吉克樹投手(23=四国IL・香川)が、田島と並ぶ新セットアッパーに名乗りを上げた。楽天戦に4番手で登板。左3人相手に四球1つは与えたが、併殺で切り抜けて1回無失点に封じた。田島に負けじと、右肘故障で離脱した浅尾の代役を猛アピール。守護神岩瀬と田島、又吉の3本の矢がトリデになりそうだ。

 又吉は左3枚が並ぶ楽天を苦もなく封じ込めた。打者は日本一メンバーの聖沢、岡島に実績ある後藤。だが度胸満点のサイドスローが臆することはなかった。1つ四球は出したが、圧巻は後藤を139キロ真っすぐで二ゴロ併殺に斬った場面。内角高めで起こしてからの技ありだった。「高めは長打がある。とにかく低めでした」。1回を無安打無失点。離脱した浅尾に代わり、“7、8回のピースは又吉”を猛アピールした。

 「四球も出したし、課題はたくさんあります」。自分に厳しく反省したが、変速右腕にして左右どちらもOKは頼もしい限り。2日DeNA戦では2死満塁で救援。大砲ブランコを料理したシーンも鮮烈だった。「でもどちらかというと左打者の方が得意ですね」。左打者の膝元に切れ込む真っすぐが大きな武器。本領を発揮し、プロでも通用する手応えをつかんだ。

 第2の故郷に錦を飾った。沖縄を出て4年間過ごしたのは岡山市の環太平洋大。マスカットスタジアムは、中国地区大学リーグで何度も投げたホーム球場だった。「打たれたり抑えたり…。懐かしかったです」。1年時に上手から転向したサイド誕生の原点。2年秋には近大工学部との代表決定戦で先発勝利し、無名大に初の神宮切符をもたらした。汗と涙が染みこんだ聖地へ恩返しの快投だった。

 試合前には、大卒後進んだ四国IL・香川の西田真二監督(53=元広島)からも激励を受けた。「マジメにやれよ!」。ぶっきらぼうでも温かい一言に、感謝でいっぱいになった。

 前日浅尾の代役に立候補した田島は1回を完全。守護神岩瀬も1回を無安打に抑えた。ここに、又吉、田島、岩瀬の「3本の矢」が、勝利の方程式として見えてきた。谷繁兼任監督は試合後「現実的に浅尾はいない。誰だろうがそのポジションをつかめばいい」と言った。新人右腕が救世主になるかもしれない。【松井清員】

 ◆又吉克樹(またよし・かつき)1990年(平2)11月4日、沖縄県浦添市生まれ。西原3年夏に内野手から投手に本格転向。コーチから山田久志氏の著書を参考書として渡され、サイドスローを完成させた。環太平洋大から13年に四国IL・香川に入団。1年目から最多勝でMVPを獲得した。180センチ、74キロ。右投げ右打ち。背番号16。