<オープン戦:阪神5-6日本ハム>◇8日◇甲子園

 名刺代わりの石直球でゼロ封だ。阪神の新守護神、呉昇桓(オ・スンファン)投手(31=韓国・サムスン)が8日日本ハム戦で本拠地甲子園にデビューした。9回、四球と安打でピンチを背負いながら力のこもった直球で三振、中飛と切り抜けた。甲子園のスコアボード、最終回に刻まれた「0」。新守護神のマンモス伝説が、今、始まった。

 甲子園の空気に優しく包まれた。呉昇桓の名前がコールされると、右翼席から大歓声が起こった。コブクロ「君という名の翼」のメロディーに乗って、主人公はマウンドに向かって走った。右翼ポール奥のブルペンからリリーフカーには乗らずに登場。ボールを受け取ると、景色を味わうように360度を見渡し、投球練習を始めた。

 呉昇桓

 まだオープン戦だけど初めての甲子園ということだったので。リリーフカーには今まで乗ったことがないんです。次からは僕は走って、彼(江口通訳)を乗せますよ。

 石直球をホームのファンに披露した。1死から四球と安打などで1死二、三塁と攻め込まれる。左打席にはこの日2安打の日本ハム西川。1ボール1ストライクからの3球目、134キロの内角スライダーで空振りを奪った。4球目、高めに突き刺さるような石直球を投じ、空振り三振を奪った。続く北も中飛に。甲子園初陣をゼロで飾った。

 寒さから手に息を吹きかけながら投球した。それでも最速148キロ。スピードガン表示以上に押し込んだ打球や空振りが、威力を物語る。

 「オープン戦はあまり投げたことはないけど、韓国のほうが寒い。マウンドも問題ない。いいと思います。これから徐々に上げていく段階です」と聖地のマウンドに手応え。前回登板の5日ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)で1失点し「次は失点しないように」と言った誓いも果たした。

 マウンドを降りてからは反省会も忘れない。捕手藤井、中西投手コーチをまじえて話し合った。杉谷に中前打された147キロ直球を振り返り「真っすぐの高さに気をつけろと言われました。いろいろ勉強しながらやっていきたい」。韓国通算277セーブでも、日本の野球は初めて。謙虚に順応しようと努める。

 そのとき、甲子園のスタンドは沸いていた。期待は首脳陣も同じだ。和田監督は「意識的に高めで空振りが取れていたし、走者を背負ってからの高めの真っすぐはさすがだなというのを見せてくれた」と目を細めた。走ってマウンドに上がる守護神がゼロを重ねて、甲子園の新名物になる。【池本泰尚】<近年抑え投手のオープン戦甲子園初登板>

 ◆05年久保田智之=3月9日楽天戦

 9回に登板。2死後に山崎に安打されたが、走塁死に助けられ打者3人を8球で片付けた。(シーズン68試合27セーブ)

 ◆07年藤川球児=3月11日巨人戦

 6回1イニング、打者3人をすべて外野フライに打ち取り「暖かくなれば、空振りも取れると思う」。(71試合46セーブ)

 ◆13年久保康友=甲子園登板なし

 オープン戦は4試合で5失点し1セーブ。(44試合6セーブ)