<オープン戦:広島8-6ヤクルト>◇9日◇マツダスタジアム

 開幕ローテ5番手は俺だ!

 広島ドラフト2位の九里亜蓮投手(22=亜大)が、ヤクルト戦で3回無安打無失点と好投し「プロ初勝利」を手にした。キャンプ期間を含めれば、これで実戦3試合登板で計8回2/3を1失点。結果を積み重ね、先発5、6番手を巡る激しい争いから一気に抜け出した。

 九里はまるで念仏を唱えるかのように、マウンド上で口元を動かし続けた。「こういうのじゃない、こういうのじゃないって呟いていたんです。口に出せば、行動に移さないといけなくなるんで」と照れ笑い。周りの目を気にしていられないほど、無我夢中だった。

 14年本拠地初戦。試合前に新人紹介のセレモニーでお披露目された後、観衆1万7097人に見守られ、2点ビハインドの5回からマツダスタジアムデビューを果たした。「完璧には程遠い内容。投げ終わりのバランスも悪かった。やってやろうと思い過ぎて、力んでしまった。でも、そんな(状態が良くない)中でも勝てる投手を目指してやってきたので」。打開策は亜大時代から度々取り入れていた「念仏投法」だった。

 「思い通りの投げ方とは違うと分かっていた。自分に対して、少しいら立っているところがあったので。念じるというか、こういうのじゃないと、自分に言い聞かせていました」

 作戦は功を奏し、3回を無安打無失点。2死から2度四球を与えた場面を猛省したが、緩急で的を絞らせない投球は新人離れしていた。味方打線の逆転劇もあり、オープン戦とはいえプロ初星をゲット。これで実戦登板3試合で計8回2/3を1失点となった。

 野村監督は「少ない球数でテンポよく投げる。いい内容で評価しないといけない。いい方向に向かっている」と絶賛。山内投手コーチも「前進です」と高評価する通り、先発5、6番手を巡る激戦から大きく抜け出したのは間違いない。

 次回は2軍の教育リーグ戦で先発し、5回を投げる予定。「決めるのは自分じゃないし(開幕ローテ入りは)まだ全く見えていない。いい投手が多いし、もっと結果を出さないと1軍にいられない」。あくまで謙虚な本人をよそに、当確ランプがともる日は近づいている。【佐井陽介】