<阪神15-0中日>◇2日◇京セラドーム大阪
あの夜を忘れられない。悔しくて、ふがいなくて何度、思い出しただろう。昨年10月13日、阪神がクライマックスシリーズ広島戦で2連敗した。9回2死走者なし。兄が空振り三振に倒れた。終戦。出番なし。阪神新井良太内野手(30)は屈辱だけが残った。「目の前で兄貴が三振して。ネクストサークルにいて自分は試合すら出ていない。何もできなかった…。あの思いが僕のモチベーションになっています」。昨季の開幕4番はCSに出場できず。デーゲームを終えると眠れぬ夜を過ごした。
だから、ひと振りに執念を燃やせる。4回だ。2点を先制し、なおも1死一、三塁。岡田の投じた初球の真ん中シュートを迷わず強振した。痛烈なライナーは左中間を破る。試合の主導権をつかむ貴重な適時二塁打になった。「僕もまだ、今季ヒットを打っていない不安でいっぱいでした」。貴重な3点目を刻み、ルーキー岩崎を援護した。
開幕三塁はライバル今成が守った。スタメンはこの日まで1度だけ。今季8打席目で今季初安打。打てない6日間、首脳陣や兄貴浩、鳥谷らから励まされ、焦りを克服した。6回無死満塁で右前適時打を放ち、7回も左前へ。8回の右犠飛で3安打3打点の活躍だ。
今季は4戦で3度、2桁失点する最悪なスタートだった。新井良には和田監督の言葉が響く。「気を出して全力疾走でやろう」。雑念を捨てる。1球に集中する。1回だ。1死後、荒木の強烈なゴロが三遊間を襲う。俊敏なグラブさばきで好捕。初登板だった岩崎の立ち上がりをもり立てた。
「あれで(自分も)乗っていけたのはある。いろいろありましたけど、僕らしく元気を出して、気を出して、全力疾走で暴れ回って勝利に貢献するだけです」
盟友の西岡が骨折でグラウンドから消えた。昨季、不振のとき、メールで励まされた間柄だ。「ツヨシのために、というと美談になる。今いる選手で、1試合1試合、あきらめずに勝っていくのが大事」。何度、倒されても立ち上がる。あの悔しさを持続できる者だけが持つ、真の心の強さが光った。【酒井俊作】



